県立武道館から松江市役所までの通りにも居酒屋を初め飲食店が点在しています。その殆どは間口の狭い、昔ながらの赤提灯といった風情のお店です。
誰かがこの通りのことを『松江おでん通り』と呼んでいた記憶があるのですが、きっとその昔は付近の官公庁に勤める人たちが仕事帰りに一杯呑める多くの飲み屋さんで賑わっていたに違いありません。通りを見渡すとその名残と思しき仕舞屋風の家が目に入り、往時の様子を窺い知ることができるような気がします。
この辺りで有名なお店と言えば、居酒屋ではありませんが『レストランまつざき』でしょうか。ザ・昭和の食堂といったお店でしたが、いつの間にか廃業されて今は更地となり跡形もありません。それから市役所近くにあった中華の『西湖』。今で言う絵に描いたような町中華で、様々な種類の餡かけラーメンが美味しくて時折おじゃましていたのですが、こちらも残念ながら閉店されてしまいました。今は無きお店ばかり紹介しても芸が無いので、現役のお店を数軒ご案内します。とはいえこの辺りのお店はあまり詳しくないのでお話し程度でご勘弁ください。
まずは『うみすけとたまひこ』。こちら元々は北殿町通りにイタリアンのお店としてオープンされました。洒落た店内で料理も美味しくて、馴染みになりかけたところで移転をされてしまったので最近はとんとご無沙汰です。現在はイタリアンではなくフツーの居酒屋になってしまったのが少しばかり残念なのですが。
お次は通りから京橋川沿いに入ったところにある『ばいかも』です。ばいかもというのは鴨の種類ではなく、水の流れの中でゆらゆら揺れてる植物の一種です。店内はカウンターだけで、先日伺ったときは6人ほどで満席の張り紙がされていました。古書肆の主人のような大将が一人で切り盛りされているのですが、意外とオシャレな料理が出てきたりして驚きます。二階にお座敷もあるようです。
最後は市役所通りに戻って昔ながらのおでん屋さんの『うす井』。過日初めて訪れました。愛想の好い女将さんが一人で仕切っている、時間が止まったような雰囲気の飲み屋さんです。中々注文のタイミングが掴めずにいると「おでんなら早くだせるけど」「こっちのお客さんに鰯の刺身を造るけど一緒にどう」とか親切に声を掛けてくれる家庭的なお店です。居心地が良くて、通い慣れたらきっと長居をしてしまうに違いありません。