探検隊にとって人跡未踏の地が寿司屋でした。危険すぎて大衆酒場のように安易に足を踏み入れることはできません。入ったはいいものの怪奇植物に絡みつかれて遭難するやもしれません。先達の皆様からみれば笑止千万なことかもしれませんが、貧乏隊員にとっては死活問題です。

 そんな中、思いがけず探検隊でもいけそうな感じの寿司屋を発見しました。それがJR松江駅前通りを西に進んだ朝日町の交差点角にある『赤べこ』さんでした。見てくれからして庶民的で、発見当時の看板には「一人前1000円から」と書かれていたのでどうにかなると思ったのです。突入の結果、どうにかなりました。居酒屋感覚で気軽に飲めて寿司が食えれば言うことはありません。その後、東本町にも店があることが分かり、足繁く通うことになったのです。

 以前は朝日町が本店で東本町は支店だったのですが、今はいつの間にか店長のJさんが独立されて暖簾分けと言う形(多分)で東本町店を一人で切り盛りされています。朝日町店は最近ご無沙汰しているので様子は分かりません。もっぱらここ数年は東本町店オンリー状態が続いています。

 なんとなればJさんがみやすい人だからです(“みやすい”というのは出雲弁で“簡単”“楽勝”といったニュアンスです)。そう、とても寿司屋の大将には見えないみやすげな人なのです。だから遠慮なく気楽に話ができるのですが、その反面、向こうもこっちをみやすげな人と思っているらしくて時折皮肉めいたことを言われたりもします。気遣い不要でのんびりできるみやすげな店なのです。

 とは言えいちおう寿司屋なのでメニューの基本は魚です。当然肉食系はありません。勿論おまかせ握りもありますが、その日の新鮮な地物ネタと肴がホワイトボードに列記してあるのでそこから選ぶのも一興です。

 私のお気に入りはお刺身盛り合わせとバクダンです。バクダンというのはおにぎりではなく爆弾納豆のことです。ひきわり納豆に魚介、胡瓜、沢庵、海苔といった寿司の材料を混ぜ込んだ一品です。後で知ったのですが、寿司屋さんの賄いメニューが元祖といわれています。意外とお酒のあてにもいけるんですよ。

 このお店、一馬力な上に色々な意味でキャパが狭いので要事前連絡です。興味のある方は是非どうぞ。但し高級寿司店に行ける方はそちらへどうぞ。