春になり天気も良くなってきたので、箸袋の旅を再開しましょうか。これまでJR松江駅周辺をスタートして新大橋を渡り東本町までたどり着きました。今回はその辺りからふらふらと歩き始めたいと思います。
まずは京橋川沿いにある『鶴丸』。隠岐料理を提供するお店として有名です。隠岐料理って何?と問われると絶句しますが、隠岐諸島産の新鮮で美味しい食材を使った料理が評判です。この店の裏手からはすぐに京橋川へ降りられるようになっていて、そこから屋形船が出ていた記憶があるのですがいつの間にか見かけなくなりました。乗船したような気もするのですが・・・夢か幻だったかな?
次は同じ通りを西に進んだところにある『湖粋』です。和食のお店で「こいき」と読みます。誠に質素な佇まいで少しばかり入る者を拒むような雰囲気も漂っています。実際ふらっと入れるお店ではありません。早めの予約、必須です。だからと言って高級な堅苦しいお店ではなく、ご主人も店員さんも気配りが行き届いていて落着いた雰囲気の中で美味しい料理とお酒が楽しめます。コース料理が中心なので、お酒もそこそこ飲めば一人あたり渋沢さん一枚じゃ足が出ますが、普段は安い居酒屋メニューしか口にしない吝嗇者にとっては至宝のような料理が堪能できます。大切な家族のお祝いや記念日にちょっと贅沢を、そんなお店です。
またまた西へ移動して京店商店街に進入します。随分前のことになりますが、現在の「そば遊山」がある辺りに『亨』なる鯨料理のお店がありました。「とおる」ではなくて「きょう」です。箸袋にはかわいい鯨のイラストと「鯨倶楽部」の文字があります。我々世代の学校給食の肉と言えば鯨肉が定番で、中でも私は竜田揚げが大好きでした。このお店の噂を聞いたとき、久々に鯨の竜田揚げが食べられるかも!と勇んで行きました。果たしてありました。噛み締めると確かに懐かしい鯨肉特有の風味が滲み出てきました。けど、何故だか美味しいと思えなかったのです。その心持を例えるなら、子どもの頃よく遊んでいた裏通りに大人になってから行ってみると「あれっこんなに狭かったっけ?」と違和感を覚えるあの感じ。子どもの頃の思い出は、思い出としてそっとしておくのが一番のようです。
このお店はその後移転し、鍛冶橋近くの京橋川沿いで営業されていたようですが、その頃も鯨料理を提供されていたかどうかは定かではありません。