西蔵旅行記 6(承前)

 昨日中国のどこかで大雨が降ったらしい。4時間遅れでラサを飛び立ち成都に着く。普通に呼吸するだけで生活できる空気がありがたかった。久しぶりのビールを飲みながら四川料理を腹一杯食べた。夜も安心してぐっすり眠られることを思うと嬉しかった。ホテルのユニットバスにひたりながら日本に帰ったら温泉に行こうと考えた。私のチベットの旅が終わった。短い時間ではあったが、信心深いチベットの人たちと触れ合うことができた。厳しい自然環境を感じる体験もできた。そんなチベットの旅を通じて、幸せとは自然と人と宗教が大切にされ、調和している生活ではないですかと語りかけられたような気がする。宗教に不慣れな私にはうまく咀嚼できないが、そんな幸福観を身近に感じることができたことは貴重な体験だった。1989年ノーベル平和賞を受賞したダライ・ラマ14世はその記念講演で、人間一人ひとりの内的平和が世界の平和につながることを説いている。そして、チベットは非武装中立の仏教国となることで世界平和に貢献したいと述べていた。それからちょうど30年。チベットの人々のその願いと祈りは困難な社会情勢の中でもおもねることなく、迷うことなく続いていることを私なりに実感する旅となったように思う。お盆を迎えた仏壇に手を合わせ旅の無事をご先祖様に報告する。いつもの「南無阿弥陀仏」の代わりに「オムマニペメフン」と唱えてみる。こっちの方がしっくりくるなあとチベット通ぶる自分がおかしかった。(終)