ニュース日記 1007 イラン攻撃について
30代フリーター 自国から遠いイランへのアメリカの武力攻撃は、西半球への資源の集中を目指すトランプの「ドンロー主義」にも反するのではないか。
年金生活者 イスラエルの最大の脅威を除去することで、中東への介入にともなう米国の負担を減らすのが攻撃の狙いだとすれば、ドンロー主義に沿っているとも言える。ドンロー主義は、世界の覇権国家、すなわち「世界帝国」の座からずり落ちつつあるアメリカが、これまで世界中に築いてきた「帝国」の軍事的、政治的、経済的な足場をリストラするためのイデオロギーだ。足場の代表的なものが軍事同盟であり、NATO加盟諸国や日本に対して、同盟維持の負担の増大をアメリカに代わって担うように求めているのもリストラの一環だ。
トランプは、これまで海外の「帝国」の足場に注ぎ込んでいたリソースを自国に振り向け、「アメリカを再び偉大に(MAGA)」することを政権の使命としている。それは「世界帝国」を西半球の「地域帝国」に縮小することを意味する。
トランプの進める「帝国」のリストラは、だれが政権を握っても進めざるを得ないアメリカの課題だ。トランプはその速度を人為的に上げようとして、「法の支配」を無視し、武力に訴える。
30代 1期目のトランプは「自分は新たな戦争を始めなかった大統領だ」と自賛した。2期目に入ると「平和の構築者」を自称し、7つの戦争を終わらせたと豪語した。実際にしていることは、ベネズエラ襲撃、イラン攻撃と、言葉とは裏腹の振る舞いだ。
年金 彼が「自分は始めなかった」と主張する「新たな戦争」とは、世界の警察官としての武力行使を指す。テロ退治のアフガニスタン戦争や大量破壊兵器の除去が名目のイラク戦争はその種の戦争に該当する。それは「世界帝国」としての警察行動だった。その座から降りて自国を「地域帝国」に縮小していくためのリストラを進めるトランプには、そんな戦争は持ち出しを増やすだけの障害物でしかない。
それに対し、ベネズエラ襲撃やイラン攻撃は、西半球を勢力圏とする「地域帝国」を守るための武力行使であり、「力による平和」の実現ということになる。
30代 アメリカがイスラエルの言うことをよく聞き、国際法違反の武力行使にも寛容な理由のひとつとして、両国の建国の経緯の相似性をあげる見方がある。アメリカはピューリタンの英国人らが先住民から奪った土地の上に建国され、イスラエルはシオニストのユダヤ人が先住のパレスチナ人から奪った土地の上に建国された、と。
年金 そのとらえ方は両国の建国を「入植者植民地主義」と呼ばれる植民地主義の形態のひとつとして見る立場で、米国政府や主流の外交政策専門家のとらえ方とは異なる。だが、トランプ政権、ネタニヤフ政権による容赦のないイラン攻撃を目の当たりにすると、植民地主義がその根幹にあると考えないわけにはいかない。
ヨーロッパの植民地主義の起源は、15世紀末からの大航海時代にある。1492年にコロンブスがアメリカに、1498年にヴァスコ・ダ・ガマがインドに到達した。羅針盤の発明、天文航法の発達がそれを可能にし、植民地貿易、遠隔地貿易を利潤の源泉とする商業資本主義の発展を促した。同時期に西欧に成立した絶対王政国家は常備軍の軍事力でそれをあと押しする「重商主義」政策をとった。
資本主義はその後、第2次産業中心の産業資本主義、第3次産業中心のポスト産業資本主義の各段階を経て、今ふたたび商業資本主義に回帰しつつあると見ることができる。国家が先端技術の開発を直接あと押しし、軍事力をバックに資源などの供給網の確保をはかる「ネオ重商主義」が各国政府の基本路線となった。それを最も露骨かつ性急に実行しているのがトランプだ。重商主義は植民地主義と一体であり、トランプ政権の振る舞いはその歴史と共振している。
30代 イラン攻撃をめぐって、日本政府は「イランによる核兵器開発は決して許されない」とする外相談話を発表した。同盟国のアメリカに気を遣うにしても、せめて「当事国はただちに戦闘を停止し、交渉のテーブルにつくべきだ」くらい言えなかったのかと思う。
年金 日本はそれを言える明確な法的根拠を持っている。国際紛争を解決するのに武力は使わないと宣言した憲法があるからだ。
憲法の前文は「われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ」とうたっている。政府はそれを実行に移す義務があり、戦争や戦闘の当事国には紛争の解決に武力を使わないよう求め続けなければならない。
戦火を交えている当事者たちは簡単には耳を貸さないだろう。それでも「私たちは戦争も武力による威嚇も武力の行使も永久に放棄した。だから、あなたたちもそうしてほしい」と繰り返し訴えることで、少なくとも日本に対する安心感を相手に与えることができる。それは憲法9条の持つ「無防備」の抑止力を高めることにつながり、日本が生き延びる道を広げるはずだ。
