老い老いに 37

 娘の子どもが小さい頃は、熱を出すと我が家で預かることがよくあった。上が5年生、真ん中が3年生、末っ子が年長となったこの頃はそれがほとんどなくなっている。

 2000年の日記を読み返すと、我が長女は高校2年生、長男は中学1年生、二男は小学校4年生になっているというのに、3人それぞれが熱を出したり、腸感冒になったりして学校を休み、病院通いをしている。特に長男は頻繁に身体を壊し、年が改まって3か月経っていない時の日記にはこう書かれている。「義一は厄年のようだ。風邪3回、自転車事故。何とか厄払いをしなくちゃ」。産まれてからずっと反抗期のような長女と、やんちゃでしたい放題言いたい放題の二男に挟まれた長男には反抗期のようなものがなかった気がしていたが、そうでもなかった。長男は何かあると義母のところに逃げ込み、そこで癒されていた。けれども中学生になり、友だち関係で思うようにならないことが重なり、体調も崩しがちで、押さえきれないものがあったようで、結構私にぶつかってきている。その頃の日記には長男についての記述が一番多い。自転車事故も、そんな頃に起こしている。その日私は日曜出勤で、夕方家に帰ると長男の自転車がない。何かあったかと飛んで家に入ると、夫から事故のことを聞かされた。幸いヘルメットをしていたのでかすり傷で済んだが、坂道を下ったところで車にぶつかり、自転車は使い物にならないほど壊れてしまったとのこと。

 相変わらず子どものことで悩み振り回される日々の中で迎えた年度末、私は2年間の中学校勤務を終え、今度は鳥取県との県境に近い小さな小学校へと転勤することになった。4月1日の日記にこうある。「『ちょっと母さん、有珠山が大爆発した』という夫の朝の第一声。今日はエイプリルフールだから質の悪い嘘だろうと思ったが、実際あちこちで噴火し、皆避難している。小学校など、教職員が寝ずの番だ」

 夕焼け通信8年目に突入する頃、有珠山が大爆発を起こしたのだ。過去に何度も爆発しているこの山を北海道大学有珠火山観測所がずっと観測を続けていたという。そこが144時間以内に爆発すると発表し、143時間後に実際に爆発が起きている。お陰で適切な避難誘導が行われ、死傷者は出ていない。防災対策にはそうした地道な努力が必要なのだ。