老い老いに 29

 「天草旧婚旅行」に出発した6人は、九州に入ってまずは大宰府天満宮にお参りした。そのあと予約していた熊本水前寺の宿に到着。他の皆は風呂に向かい、私一人水前寺公園を散策する。そこで公園内にある出水神社で宗不旱の歌に出会った。放浪の旅を続けた歌人で、病の床で故郷を懐かしむ内容の歌が刻まれていた。2日目は天草五橋を渡り、海辺に出る。

 「点在する島々、ヤシ、ソテツなど南国を思わせる木々。島は斜面だらけ。かつては、海の資源と狭い農地で細々と生計を立てるといった土地柄であったろう」と書いている。この土地に立ってみて、隠れキリシタンたちが天草四郎を擁して反乱を起こしたことも、若い娘たちが南方へ稼ぎに行ったことも想像できた。午後は、1991年に噴火した雲仙普賢岳に向かう。長男が、「ねえ、僕たちがおる時に噴火しない?」と思わず口走るほど、生々しい溶岩流の跡だ。その後、雲仙地獄めぐりをする。ぼこぼこと湯が吹き上がるのを見ながら歩いて行くと、十字架の建っているところに行き着いた。隠れキリシタンが拷問を受けたところだ。火山の噴火も起こる恵まれない土地で、細々と生計を営む人たちが救いを求めたキリスト教。激しい弾圧にも屈することなく、抗い続けた人々の魂が宿るこの地にたどり着いたことに感慨を覚えるとともに、そこへと導いてくれた人との縁を深く感じた。

 その後に連載したのは「セカンドマザー」。「ギイチ君の虫遍歴」で長男、「わんぱく物語」で二男のエピソードを綴り、最後の登場したのが長女。実は、絵本も一冊ずつ作っているが、それも長男、二男、長女の順だ。こだわりの強い長男、一時もじっとしておらず動き回る二男に比べると、さほど特記すべきことがないように思えた長女。だが、書き始めるとそうでもなかった。保育所の入所式で、「明日から来るの嫌だ」と泣き続け、初日に窓から逃げ出すなどの暴挙に出る幼児はそれほどいないだろう。結構な長さの連載となった。

 新たに夕焼け通信の紙面をにぎわしたのは、現在も朝日新聞に毎週土曜日「野の花あったか話」のタイトルで連載されている徳永進氏の講演録「ぼくが見たいのち」、K・Aさんの詩などだ。K・Aさんの詩は、昨年亡くなった谷川俊太郎さんに絶賛されている。

 その他、講演や出版の案内、コンサート等々の案内まで掲載されることが増えている。