老い老いに 25
夕焼け通信5年目の年も暮れ、1998年に突入した。この年の元旦、息子たちを連れて近くの神社に初詣に行くと、お参りに来た客の中に3人居た年男が祭壇の前に座らされた。長男もその一人で、白い衣を付けられ神妙な顔で神葉を受け取っていた。
さて、この年はどんな年であったか。10大ニュースをあげてみる。
1位、長野オリンピック・パラリンピック開催。2位、和歌山毒物カレー事件発生。3位、金融ビッグバン本格開始。4位、大蔵省接待汚職事件。5位、小渕恵三内閣発足。6位、郵便番号七桁導入開始。7位、映画監督の黒澤明が逝去。8位、FIFAワールドカップフランス大会日本初出場。9位、古都奈良の文化財世界遺産登録。10位、アメリカがGoogle創設。
ググるなんて言葉が一時よく使われたが、インターネットで検索することを指すその言葉の元になったGoogleが出来たのがこの年のようだ。その後、情報を得たり発信したりするツールがどんどん出て便利になった反面、情報過多になり、フェイクニュースが流れたり誹謗中傷による痛ましい出来事が起きたり…。最近では世界に広がる組織犯罪にまで使われている現状を見ると、この先の展開が恐ろしくなってくる。
数年前から年賀状は失礼するようになり、郵便番号を記入することが少なくなった。この年、牛乳パックを使った手すきの紙作りに挑戦し、ハガキも何枚か作った。その際、買ったのが7桁の郵便番号の枠のスタンプだ。今は引き出しの隅に眠っている。
その年を表す漢字が毒。今なお真相が分からないままの和歌山のカレーヒ素混入事件。死刑判決が下されたが、被告は無罪を主張し、決着はついていない。袴田事件の冤罪が晴れるまでに58年を要した。当事者のみならず関わる人々のその後の生き方を左右する法。私など、一行読むだけで頭が痛くなってしまう条文を頭の隅々まで詰め込んで考える法に携わる人でも、様々な葛藤を抱えながら決断を強いられる。裁く人も裁かれる人も重い十字架を抱えて過ごさねばならない。法を作った人間に課せられた業なのか。
最後は明るい話題。1位になった長野オリンピック・パラリンピック。沸いたのはスキージャンプだった。日本中の大多数の人がテレビにくぎ付けになったのではないか。