老い老いに 8
昨年3度目の北海道旅行にいくはずだったのが、行く途中事故に遭い中断する羽目に。北海道には早期退職した年と、その次の年にバイクで行っている。北海道をバイクで旅をすることに少なからず影響を与えたのが、2年目に編集長が連載した「北海道カブ一人旅」だ。編集長は「これはおすすめ」も続けながら、「北海道カブ一人旅」を書き始めている。その頃、私にとって北海道は全く縁のないところだったので、出てくる地名も名勝も頭の上を素通りしていた。けれども、今読み返すと、自分が走った時の情景が浮かんでくる。1年目は7月中だったので寒さとの戦いだった。あるもの皆着込み、タオルまで首に巻き付けても寒いのだ。狩勝峠も石北峠も雪景色の上霧で視界が悪く、夫のバイクのテールライトだけを頼りに走った。2年目は時期を1か月ほど後にずらしたので、1年目ほど寒くはなかった。そして、ほぼ一周といった感じで回ったので、カブの軌跡と重なるところが結構あった。編集長の旅は一人で4週間近く、行きは下道をひたすら走るし、道中には様々な苦労あり、出会いありの旅で、私が経験したのとは比べようもない分厚いものだ。けれども、読んでいるうちに、広大な土地、どこまでもまっすぐに続く道路、すぐそばで草を食む牛や馬、道の真ん中で寝そべっていたキタキツネや木の陰に佇むエゾシカ、オホーツクの夜明けの海、浜に並んだ昆布、見るもの皆新しく、胸が躍ったあの旅を思い出した。
同じく紀行文をOさんが連載してくれている。こちらは夏休みにイギリスを旅した後、ほやほやの文章を寄せてくれた。その頃には私も何とかメールのやり取りができるようになっていて、Oさんから受け取った原稿をワードに打ち込みメールで編集長に送った。だから、いち早く原稿を読める。大英博物館やトラファルガー広場、ヨークやスコットランド、リバプールを巡ったツアーの様子、頭に残る写真などの映像を浮かべながら打ち込んだ。買い物や飲食、金銭感覚の違いなど、日常の様子も綴られ興味深かった。当時の首相はメージャー氏。マーガレット・サッチャー首相とブレア首相の間に首相を務めた人だ。