がらがら橋日記 小泉八雲『怪談』出版120年
来年秋に始まるNHKの朝ドラが『ばけばけ』に決まった。最初に聞いたときは、また水木しげる?と思った。ところがモデルは小泉セツ。小泉八雲は、おばけというより幽霊だろう、と思ったが、きっとさまざまな「ばける」が描かれることになるのだろう。折しも、今年は小泉八雲が代表作の『怪談』を出版して120年にあたる。それを記念して、松江市が様々な企画を考えている。市民の企画参加も求めていて、最高30万円の補助金を出しましょうという熱の入れようだ。
前にも書いたが、小泉八雲を子どもたちに語ってもらいたいというのは、落語教室開設以来の願いだったので、この流れに乗らない手はないと考えた。どっちみちやるのだから補助金は関係ないが、もらえるのならやれることも広がるから、申請してみることにした。一つ気がかりなのが、要項に交付の対象外と挙げてある「営利を主たる目的とした者」の項目。超零細企業体の我が塾もひょっとしてこれに相当するのかと、念のため市に聞いてみた。数日して届いた回答には、「ホームページなど見せてもらいましたが、残念ながら、貴塾は、営利を主たる目的とした者にあたると判断しました。」とあった。ホームページもわざわざ見てくれたんだとちょっと感謝したのと同時に、ほほう、うちの塾もそう見られるのだと何やらおかしかった。実態に応じての判断なぞしていられないだろうから仕方ない。
補助金は袖にされたが、代わりにいくつか有益な情報をくれた。その一つが120年記念のロゴマークで、使用許可を申請して承認されればホームページやチラシに使えるというものだ。これが実にかっこいいので申請してみたら、2日ほどして松江観光協会事務局長の判子が押された承認書が送られてきた。すぐにそれを入れたホームページのスライドとチラシを作った。補助金もらってややこしい報告書を作る手間を考えると、これで十分だと思った。
子どもたちの何人かには、すでにその子に合いそうな怪談を渡している。
「うちの子、夜一人でトイレにも行けないんですが、だいじょうぶでしょうか」
と心配された保護者もあったが、ぼく自身がそういう子であったと同時に無類の怪談好きであるから、
「もちろんです。語る側が怖がっていないと聞いている方は怖くありませんから」
と根拠に乏しい論旨で煙に巻いた。無理強いするつもりはまったくないが、どうやらおもしろくなってきた子がいるようだ。