がらがら橋日記 喬若さん
宣伝も兼ねて書かせてもらうのだが、再来月の4月14日、塾主催で「いきいき寄席」を松江の観光寺月照寺となりの東林寺で行う。午後1時半開場で午後2時開演、。入場料は投げ銭にしようか今も迷っているが、これまで千円と刷り込んだチラシをいくらか配布しており、だんだんと変更しにくくなっている。出演は、これから入塾があれば増えるかもしれないけれど5名、そして上方落語家の笑福亭喬若さんをゲストとして招く。
喬若さんとは、出会って13年になる。奥出雲で仲間たちと落語会をしようという話で盛り上がったものの、どこに相談したらよいのか誰も知っている者がいなかった。わずかな予算しかないのだから、テレビによく出てくる落語家など正攻法で呼べるはずもない。落語好きの知人に聞いたら、大阪で観光クルーズに乗ったら若手の落語家さんが座を楽しませてくれた、と喬若さんの名前を教えてくれた。どう調べたものか忘れてしまったが、喬若さんと直接連絡が取れて、来てもらうことになった。一度も落語を聞いたことがないが、若手だから安いだろうという理由で招くことになった(喬若さんごめんなさい)。実際安かった。渡した出演料が後で見たら多すぎたので、来年また来ます、と正直すぎる約束をして帰るほどに。
翌年、せっかくだからと師匠の笑福亭三喬(現笑福亭松喬)さんとともに来てもらった。師弟の二人会もすばらしく楽しかった。
酒は一切呑まず、牛乳が大好きで、絶えず落語のマクラのごときおしゃべりを聞かせてくれる喬若さんとの出会いがなかったら、ぼくは高尾小学校で落語をしようとは思いつかなかったかもしれない。
塾で落語教室を始めることになったとき、喬若さんには真っ先に知っておいてもらいたいと思った。塾生が誕生したときには、いっしょに寄席をしようと決めていた。そんな話を伝えたら、
「2月に仕事で城崎に行くんですわ。その前後で寄りましょか?」
塾生の稽古に寄ろうかという提案が喬若さんから届いた。城崎と松江はついでの距離じゃないことを知らないのじゃないか、と思ったが、それには触れず、ぜひお言葉に甘えたいと小狡い返事をした。
つい先日、毎年松江が騒がしくなる日、喬若さんは教室で子どもたちの落語を聞き、そして実演をしてくれた。どんな高座でも、どんなお客さんの前でも全力投球、それを目の当たりにした子どもたちである。どんな言葉で説かれるより、プロの心構えをしっかりと心に刻みつけたに違いない。