がらがら橋日記 花の小一トリオ

着物の女の子二人
ドレスの女の子
フラメンコを踊る

 

 落語教室に二人の塾生が入ったことはすでに何度か書いているのだが、11月25日についに初めての高座に出向いた。

 改めて二人の名前を記しておくと、9月入塾の活塾亭ふらめん子と10月入塾の活塾亭あーと、である。

 7月、落語教室体験に訪れたのは二人姉妹で、短い小咄をしてみたら二人とも恥ずかしそうではあったが同時に楽しんでいるようにも見えたので、案外一気に二人の入塾があるかもしれないと思った。お母さんがフラメンコを教えているので、ふらめん子とばるせろ菜という高座名まで思いついてしまっていた。

 その後、二月あまり経って一年生の妹の方が落語をやりたいと言って入塾してきた。好きなものを高座名にしよう、と言うと、みかん、ハート、チョコレートなどいくつも候補を挙げた。ぼくは、さりげなくフラメンコを挟み、「ふらめんこの「こ」は、子どもの「子」だ」、と最初に思いついた高座名を決して押しつけにならないよう注意をして添えた。

 しばらくして、名前を決めたと言うので聞いてみると、「ふらめんこ」と言う。「ふらめんこの「こ」は」と重ねて聞くと、「こどもの「子」」と答えた。真っ先に浮かんだ高座名がそのまま採用されるに至って何だかいいスタートが切れた気がした。

 あーとも同じように好きなものを尋ねたら、ピアノ、歌、おどり、お絵かき、読書、と多才を証明するラインナップだ。「アートだねえ」と感心して言ったのが耳に残ったか、「あーとにします」と言ってきた。「あーと」は多芸の総称ということで、あーとには「じゅげむ」をしてもらおうと思った。

 高尾小学校の子どもたちとの四年間で、落語は何よりも場数、という教訓を得ているので、稽古が始まるとすぐ常時公開することにした。ご近所のお年寄りたちが意気に感じて、毎回足を運んでくださる。子どもたちにとって(たぶん大人にも)必要なのは、自分の話に耳を傾けてくれる人の存在だ。他者に対して正直でいられる信頼感は、そういう場で育つと思うのだ。回を重ねるごとに声は強くなり、臆したような表情は消えていった。だから初高座とは言うものの、すでに稽古が高座と変わりなく、順調に場数は踏んでいたのである。

 そしてデイサービスでの初高座、二人ともいつもに増しての力演で、利用者や職員の皆さんから拍手、掛け声、笑い声、賞賛をたんと浴びた。そしてうれしいことに踊りにだけ参加していた同級生の女児が「わたしも落語やりたい」と塾生になった。「花の小一トリオ」が誕生した。ご期待いただきたい。