がらがら橋日記 置いてけぼり
ちっとも必要を感じなかったもの、スマホ、電子黒板、タブレット…。こうして並べてみると、典型的なデジタル難民なのだが、あんまりその自覚はない。パソコンは毎日使うし、ご承知のようにホームページも独学でどうにか開設した。それだけは必要を感じたからである。
この間、あるパーティーで初対面の小学校教員と話す機会があった。正確に言うと、彼の言い分をもっぱら聞く機会だったのだが。
「ぼくに言わせるとね、電子黒板やタブレットを授業で使いたくないなんて言ってる教員、終わっちゃってますよ。」
「(あんたが話しかけてる元教員は、終わっちゃってるんだね。)ふん、ふん。」
「使えないなら研修受けて自分で練習して、使えるようになれっつうんですよ。」
「(いや、研修受けたんだけどね、さっぱりやる気がしなかったんだよね。こんな壊れやすくて、プツッと止まってしまうかもしれない代物、高いから壊しちゃいけないって渡す方がどうかしていると思うんだけど…)ふん、ふん。」
「だれが被害者か分かりますか。」
「(ぼくは、ぎりぎり被害を免れたけどね。慣れない機械に四苦八苦しているベテラン教員かな…)それは、きっと…。」
「そうです。子どもですよ。そんな教員に教わる子どもがかわいそうですよ。そう思いませんか、先生。」
「(子どもも大人もみんなかわいそうな気がしてきたよ。次から次へと不慣れなことやらされて…)そうだねえ、そうかもしれないねえ。」
どんどんコーナーに追い詰められ、どこで白状したものか探っているところで、司会がスピーチの始まりを知らせ、ダウン前にゴングとなった。
これはまたついこの間のこと。塾のホームページを依頼している制作会社で聞かれた。
「逆SEOって知っていますか。」
「(その前にSEOを知らんけど…)はあ。」
ネット検索で上位に上げるための対策がSEOで、競争相手を下げるのが逆SEOなのだそうだ。ネット上では容赦のない乱闘が日々繰り広げられているという。ホームページを作ってずいぶんになるが、そんなもの初めて知った。
「どちらの対策も当方でやりますので。」
(そりゃ、どうも)塾生一名のミニマム塾を相手に逆SEOを仕掛ける暇人もあるまいが、こんな剣呑な世界は、置いてけぼりをくらうくらいが身のためだ。