空き家 7 蘇る家④
隣保だけでなく、道路を挟んだ向かい側の家々も同じように空き家が増えている。道路の東突き当り1軒目が空き家、西へ進んでいくと、1軒をとばした次の2軒が空き家、その西2軒は高齢の方の一人暮らし。その隣が空き家、そして昨年家が壊された後の更地、また空き家となっている。
2年前に他界した義母がまだ家の前に歩いて出られる頃、駐車場の脇に腰かけるスペースがあり、そこに義母が座っていると、お向かいの奥さんやその隣の奥さんが寄ってきて、井戸端会議が始まったものだ。お向かいさんも、そのお隣さんも、数年前に施設入所され、2軒とも空き家になってしまった。駐車場脇の井戸端会議場に今は誰の姿もなく、たまにうちの孫が来て座るくらいだ。
そのお向かいの隣の家に、数か月前から業者さんが頻繁に出入りし、家具などを持ち出されるようになった。ここも壊されてしまわれるのだろうかと思っていたところ、この春、若いご夫婦が入られた。義母とよく井戸端会議をしていた方のお孫さん夫婦だということだ。これまでずっと空いていた駐車場に、朝夕2台の車のエンジン音が聞こえてくるようになった。駐車場で出会ってあいさつを交わすと、つい顔がほころびてしまう。
玉湯に居る娘たちの家の裏は山で、竹がたくさん生えている。4月の半ば頃、忠ちゃんが、土嚢4袋に筍を詰めて持ってきた。近所中に配り、その新しく入られた人の家にも持って行く。そしたら、数日後、奥さんがお菓子を持ってこられ、恐縮してしまった。受け取った夫によると、「嬉しかったんです」と言われたのだそうだ。慣れない土地、家に入り、心細い面もあったのだろう。早速ご近所扱いされたことが嬉しかったのかもしれない。
この春、隣保の工務店Kさんところの実歩と同い年の次女さんが小学校に上がり、お姉ちゃんと一緒に我が家の前を通って学校へ通うようになった。お隣さんは小学校2年生になり、集団登校の集合場所に朝出かけて行く。隣保に子どもの声が聞こえるようになり、向かいには若い夫婦が住まい、うちの周りが急に活気づいてきた。