専業ババ奮闘記その2 二人暮らし②

 

「福井に行ってる間、親父でもお袋でもいいから、ボルティに乗ってね」と息子に頼まれていた。ボルティというのは、息子のバイクだ。何とかお金が貯まったと言って、中型バイクの免許を取り、中古で買った250㏄。夏場の水やりに一日おきで出雲まで往復するほど、110㏄のスーパーカブには乗り慣れているが、久々の250㏄には抵抗があった。またがってみると、やはり大きい。恐る恐るエンジンをかける。クラッチが蹴り上げ式なのを思い出しながら少し走るが、曲がる時や信号で停まる時はドキドキする。最初はガソリンスタンドまで走って給油して帰り、次の週は広瀬まで足を延ばした。そして、3回目、宍道湖一周する頃には、かつての勘が戻り、爽快に走っていた。

 息子が福井に行ってから2週間ちょっと、誕生日に「おめでとう」のメールを送ると、「夫婦仲良くね」との返信。義母の介護の真っ最中の頃は、結構家族の間でギスギス感があり、息子なりにあれこれ気を揉んでいたのだ。だから、少しでもどちらかの語気が強くなると、「喧嘩すんなよ」と言う癖がついてしまっていた。一日の多くの時間を点訳や孫たちの服作りに当て、夫とは口論するネタもない。

 週末、娘や孫たちを迎える日は、朝から大忙しだ。買い出しに行き、昼食の準備をする。この日のメニューは、3人とも大好きなハンバーグだ。材料をこねて焼くだけにしておき、添えるスパゲティを茹で、キャベツを千切りにする。前日に作っておいたクレープ生地に、バナナと泡立てた生クリームを入れて包んでいく。冷蔵庫には、採ったばかりのジャガイモで作ったポテトサラダが入っている。準備が整い、皆が来るまで点訳をしていると、「おはよう」の元気な声が聞こえ、玄関に出る。実歩と寛大がにこにこ顔で靴を脱ぎ、その後ろから宗矢が娘に手を引かれて歩いてくる。

 昼食後、宗矢が寝た後は、寛大は私とお店屋さんごっこ、実歩は娘とジジと3人でトランプやウノで遊ぶ。宗矢が起きてからは、私がついて回った。歩くようになると、じっとしていない。言葉はまだあまり発しないが、言うことはだいたい分かっているようだ。息子がこれくらいの時そうだったように、相手の口元をじっと見つめている。