専業ババ奮闘記その2 ショートステイ④

 

 病院からショートステイへの移行は、入院前まで通っていたデイサービスと同じように思えたのか、拍子抜けするほどすんなりだった。面会には、入院していた時と同様、夫と一日交替で行くことにする。ショートステイの職員さんは若い方もベテランの方も接し方が暖かい。ケアマネさんからは、食事の摂取量が少ないので捕食を持ってきてくださいとか、便が出ないので座薬を買ってきてくださいとか逐一連絡いただいた。面会に行く際、飲むゼリーや、手作りのデザートを持参し、必要な時には薬局で薬を買って持って行った。

 入浴中だと言われた日のこと、風呂から上がって褥瘡の手当てをしているところに立ち会った。傷跡はほとんどよくなっていた。退院前カンファレンスを受け、褥瘡を防ぐための車椅子に当てるクッションや、ベッドに乗せるクッションもケアマネさんが選んでくださっていた。病院ではほとんど寝たきりの生活だったのが、ここでは日中はデイサービスの人に交じってテーブルを囲んで歓談したり、カラオケで歌ったり。起きて車椅子に座る時間が長くなったことも褥瘡を快癒させたのだろう。

 コロナ禍で、面会は原則一人ずつで時間も制限されている。ある時、ふと思いつき、職員さんに聞いてみた。「窓越しにひ孫たちの顔を見せてもいいですか」と。かまわないということだったので、小春日和というより、日中は汗ばむほどに感じられた日の夕方、夫が面会に行く日、時間をずらして娘と三人の子どもたちを連れて追いかけた。小規模多機能の建物の裏手に回ると、カーテンが開いていて、義母の部屋の入口から夫と義母がこちらを向いて笑っている。娘と私で、寛大、実歩、宗矢を順に抱いてガラス窓越しに義母と面会させた。ガラス窓の外にまで、甲高い義母の、「寛大ちゃん」「みーちゃん」「しゅうちゃん」の声が聞こえてきた。きっと忘れているだろうなと思って、次の日の面会の時に、寝ている義母を起こして尋ねたら、「まど」と言う。ちゃんと覚えていたのだ。

 その話を義姉にしたところ、数日後、姪二人がそれぞれの子どもを連れてガラス越し対面にやってきた。そういうこともあってか、食事も少しずつ摂れるようになり、病院に居た頃とは見違えるように表情が明るく、元気になっていった。