専業ババ奮闘記その2 コロナ禍の中で⑥

 

「しゅうちゃんは元気かいね」「あら、昨日来ましたがね」「そげだったかいね」。義母の会話に出てくる人物は、宗矢が主流になってきた。これまでは、「寛大ちゃん、来んかなあ」「みいちゃんはどげしちょうかな」と話すことが多かったのに。寝返りする様子や、声を掛けると返す笑顔が可愛くてたまらないようだ。

 そんな義母に、突然不機嫌になることの他に以前と変わってきた点がいくつかある。暑さ寒さの感覚もそうだ。

 ビア樽のような体形をしていて、自分のことを〝ぼてちゃん〟と言っていた義母も、腹回りは維持したまま、かなり体重が落ちてきた。そのせいもあってか、ひどく寒がりになった。「寒て寝られん」と言われるので、秋口から大布団を出す。まだ寒いと言われ、「真冬はどうするんですか」と言いながら、電気毛布を敷き、ストーブも部屋に運び入れた。歩くこともままならず、じっとしているから余計に寒く感じるのだろう。

 暑さに対しても、えっと思うことが多くなった。義母の部屋は南向きで、冬は陽が入って暖かい分、夏は早くから気温が上がっていく。毎年のように気温が上昇し、「危険な暑さです」がテレビから毎日のように流れてくる昨今、扇風機やエアコンの操作をしなくなった義母の部屋の空調はこちらで管理しなくてはならない。

デイサービスに行かない日など、朝九時を過ぎ、三十度を超えていても、平気で眠っている。度々部屋を覗いて扇風機をつけたり、エアコンをつけたり。陽が射すと部屋が益々暑くなるのでカーテンを閉めると、「開けてください」と言われる。訳を話して部屋を後にし、しばらく経つとドンドンと襖を叩く音。いくら話してもだめな時は、言われるがまま、カーテンも、ガラス戸も全部開ける。しばらくして部屋に行くと、三十度を超えた部屋で眠っている。慌てて戸を閉め、エアコンをつけたことも二度や三度ではない。

 襖ドンドンは、トイレだけでなく、「熱がある」などの訴えの時もだ。計ると平熱で、「暑いんですよ、夏だから」と、エアコンの温度を下げる。三十分も経たないうちに、またドンドン。今度は「寒いです」と言われ、設定温度を上げる。毎日がこれの繰り返しだ。