専業ババ奮闘記その2 コロナ禍の中で④

 

 新型コロナウイルス感染が世界中に広がることになったこの年の幕開け、元日から義母の機嫌が悪かった。圧迫骨折をし、ベッドから起きることもできず、たった一メートルしか離れていない炬燵までの移動にも車椅子を使い何十分もかかる。何もかも人の手を借りなくてはならない生活に自身嫌気がさしていたのだろうか。何を言っても喧嘩腰だ。

 移動の補助や排泄の始末は慣れてくればさほど辛くは感じなくなった。一番心の負担になるのが、ご機嫌。「今日はデイサービスですよ」と声を掛けると、「デイサービスなんか行かん」と突っぱねられることがある。夫に代わると、親子で口論になることしばしばで、そういう時は、しばらく放っておくことにした。時間を空けて再び覗くと、「起こしてくれる」から始まり、トイレに連れて行ったり、着替えさせたりとなる。一人になり、自分で何もできないことに気づくのか、それとも、怒鳴ったことをすっかり忘れてしまうのか、よく分からない。いつものように、「ごめんね、世話ばかりかけて」「ありがとうね」という言葉が出る。それでも、今日のご機嫌はどうだろうかと朝は胸がどきどきするので、デイサービスのある日は、まずは夫に声を掛けてもらい、「ご機嫌どうだった」と聞いてから部屋に向かうようになった。

そんな不機嫌な日は、デイサービスに行き始めた頃は、月に一度か二度だったのが、だんだん増えてきた。家族だけではない。同じデイサービスに週一回行く近所のSさんにも。いつも繰り返す話を「そうね」と飽きもせずに聞いてくださるSさんは、自分が行かない日もうちに来て、義母が出るのを見送ってくださる。そんなSさんにまで、「来んで」などと言う日が出てきたのだ。見送った後、Sさんが「もう来ない」と言われるので、「時々ああして機嫌が悪くなることがありますけど、Sさんのことを嫌っているわけではないんです」と詫びる。次のデイサービスに送りに来てくださった日には、「今日は何ともなかった」とSさん。

デイサービスでも、連絡帳に、「今日はかなりご機嫌が悪く、体操もされませんでした」などとある。一体義母の頭の中はどうなっているのだろう。