専業ババ奮闘記その2 虫捕り⑦
六月に入った。義母をデイサービスに送ってから向かった畑に、雨が降った形跡は全くない。畑のある一帯、実家周辺は雨が乏しい。神戸川を渡り、長浜神社の辺りから日本海に出るまでは砂地で、鳥取砂丘を狭くしたところに家が建ち、畑が点在するという感じのところだ。気候も砂漠さながらで、雨の中を松江から出雲に向かうと、神戸川に架かる橋を境にピタッと雨は止み、陽まで射してくるという具合だ。
松江の家のベランダで育てているアジウリやスイカの苗が成長し、大きくなった物から移植していて、この日は第二弾。畑の西端に建てた物置の下に三つ、反対の東側に二つ、水溜を置いている。物置の屋根を伝って雨が落ちるようにして水を溜めているのだが、もう三分の一くらいになっていた。この水が枯れると、四リットルペットボトルに水を汲んで運ぶことになる。四~五十本ものペットボトルに水を入れ、畑の所々に置いておく。去年は一日おきに早朝スーパーカブを飛ばして水やりに通った。途中でチェーンが切れ、ジャフを呼ぶ羽目にもなってしまった。今年はそうならないよう願いたいものだ。
寛大と実歩に羽化するところを見せたくて、キアゲハの幼虫をあげていたので、ニンジンの葉っぱを摘む。娘にあげたパセリはすっかり葉が無くなり、我が家のパセリも葉が乏しくなってきたのだ。キアゲハは、パセリに似たニンジンの葉も大喜びで食べる。作業を終え、着替えに実家に戻る。帰り際、庭のキウイの実を確認し、イチジクに目をやると、キマダラカミキリが二匹くっついていた。寛大と実歩に持って行ってやろうと袋に入れる。
帰りに娘の家に寄ると、玄関から出てきた寛大と実歩が、「Mが来ちょうよ」二人同時に言う。娘の中学時代からの友だちだ。たまに子守がてら遊びに来てくれている。キマダラカミキリの袋を二人に渡して家の中に入ると、Mが「お久しぶりです」と笑顔を向け、宗矢がキャッキャと声を立てた。宗矢はすっかり私を受け入れてくれている。「キアゲハに」と娘にニンジンの葉を渡すと、「幼虫、動かんに」と言うので、家の裏に回る。パセリの葉の上の幼虫は、三匹とも黒いまま干からびていた。こんな最期になるとは。そっと手を合わせた。