専業ババ奮闘記その2 里帰り⑤
再検査の結果、実歩の時と同様、異常はなかった宗矢、母乳をたらふく飲み、どんどん大きくなっていく。「頭支えるのに、もう手が届かんわ」つぎはぎだらけのビニール製バスタブに入れる娘は必死で手のひらを広げる。私はといえば、宗矢が浸かると、バスタブから湯が溢れそうになるので、ビニールの整形をするのに必死だ。
義母の世話をしながら、孫三人が家にいる生活にも大分慣れてはきたが、一番辛いのは、夜十分に眠れないこと。何せ、寛大も実歩も動き回る。少し風邪気味で鼻を詰まらせている実歩は、度々苦し気な息づかいをするので、鼻をつませたり、顔を反対に向けさせたりを繰り返さねばならない。子育て中は仕事もしていたのでもっと大変だったはずだ。年がら年中寝不足状態だった。それでも何とかやっていたのは若かったからだろう。
週末、土曜日に遊びに出た夫は、翌日曜日、寛大と実歩をJRに乗せると言って、連れて出てくれた。その間に宗矢を風呂に入れた。皆に昼食を摂らせ、孫たちを昼寝させ、少し外を歩こうかと思ったが、眠くてたまらない。二階に上がって炬燵にはまったら、そのまま眠ってしまっていた。
節分の前日であるその夕、巻き寿司を作った。寿司は寛大も実歩も大好きなのだ。皆で夕食を摂っていると、一週間ぶりに忠ちゃんが顔を出した。寛大も実歩も大喜びで引っ付きまくるかと思いきや、実歩はお父さんと目を合わせようともしない。お父ちゃん大好きな実歩なのに。
夜中、実歩は大泣きした。うちに来て初めてのことだった。宗矢が産まれた後、母親に近づけずにいた実歩が、寛大の大泣きに併せて泣き、ようやく素直に母親に甘えられるようになって安心していた。でも、まだ実歩の中には違和感がぬぐい切れずにいたのだ。いつも、お父さんとお母さんとお兄ちゃんと暮らしている日常、夜は父さんとお風呂に入り、朝起きたらお父さんがご飯を食べている。その風景がすっかり変わってしまっている。理解しようにもできない現実に、実歩の感情はこういう形で噴出したのだ。母親に代わって、ただただ抱きしめるしか仕方がなかった。