専業ババ奮闘記その2 出産②

 娘が居る産院は、まだ開いておらず、インターフォンで看護師にお願いして開けてもらう。寛大と実歩を連れて分娩室に入った途端、実歩の顔が引きつった。いつも抱きしめてくれる母親が苦しんでいる顔を見て、平気でいられる筈はない。寛大の方は、母親に近づき、手を握って「おかあさん、がんばって」と声を掛けた。「ありがとう。実歩もこっちおいで」と娘は実歩に声を掛けるが、凍り付いた表情のまま固まっている。この様子では出産に立ち会うどころではない。「寛大、実歩、お母さん頑張って赤ちゃんを産むから、保育所に行こう」と二人を早々に連れ出し、車に乗せた。「お迎えの時に、お母さんに会いに行くからね。その時は、赤ちゃんにも会えるからね」と言うと、寛大は「男の子がいいな」。実歩もようやくいつもの表情を取り戻し、「みほちゃんは、おんなのこがいい」と声を発した。

 病院に引き返してそう経たない午前八時四十七分、実歩の時と同じようにすんなりと赤ん坊が出てきた。娘の腹の上に乗せられるなり、赤ん坊は大きな声で泣き出した。元気のいい男の子だ。寛大の時から出産に立ち会うよう娘に頼まれ、「三人目は忠ちゃんだけでいいがね。私はもう遠慮しとく」と言ったのに、仕事を休めない忠ちゃんの代わりで、結局は三度とも立ち会う羽目になった。とにかく、無事生まれて何よりだ。

 と、安心したのも束の間、これからのことが頭の上にのしかかる。まずは、寛大と実歩が当分我が家で過ごすことになる。娘と赤ん坊の荷物も含め、寛大と実歩の保育所用、家で過ごす用、それぞれに分けた衣類その他を取りに、娘の家に向かった。車の中一杯になった荷物を居間に運び入れ、すぐに義母の部屋に顔を出す。夫があれこれしてくれたようで、寝巻のまま炬燵にはまっていた。「いたい」を連発する中、何とか背中のシップを張り替えながら、無事に赤ん坊が生まれたことを報告する。「男ん子かね」と目を細めて聞いていた。

 あとは、荷物の整理と、私の居場所づくりだ。