専業ババ奮闘記その2 スイカのおっつぁん②
長男の免許取得にまつわる話はまだ続く。
浪人プラス留年二年、同い年の仲間より三年遅れの卒業を前に、なかなか就職が決まらない。今度は就職浪人かと心配していたところ、ぎりぎり内々定がとれた。高速道路のメンテナンスをする会社で、内定の最後の条件に自動車免許の取得があった。教習所に行く暇はないから、短期の講習を受けて一発試験を受けると言う。「一発試験はすごく難しいぞ。絶対受からんで」と夫は言うが、もう申し込んだということで、講習に必要なお金を送った。それでも万が一にでも合格できればと祈っていたが、夫の言った通り、何度か受けたものの、卒業までに免許は取れなかった。
「社長にこっぴどく怒られたわ。入ってすぐに免許取れって」と、東京の本社での研修が始まってすぐに、息子が電話をしてきた。何と、会社はそんな息子を受け入れてくれたのだ。
初任地が神戸に決まり、仕事が始まると同時に教習所通い。慣れない土地、慣れない仕事をしながら、仕事を終えると教習所へ通うという生活は、相当に厳しかっただろう。息子なりに社長の恩義に報いるために必死だったようだ。
ここまでが、免許取得に至るまでの話。初めて帰省した時の話はここから始まる。
神戸では、当分の間、自転車通勤をし、運転免許を取得してからは原付を買って通勤していた息子が、中古の車を買ったのは三年目だ。盆休みにその車で帰るというので、気が気ではない。「今から出る」とメールが入ったのはまだ夜が明けやらぬ四時過ぎ。もうすっかり目が覚めてしまい、朝ご飯の支度をしながら息子の帰りを待った。大きなワゴン車が駐車場に入ってきたのは八時過ぎ。「会社の二トン車を運転するのに、よくぶつけるから、大きい車で練習しようと思って」と、にこにこしながら息子は下りてきた。それにしても、着くのが早すぎやしないか。