専業ババ奮闘記その2 スイカのおっつぁん①

 長男の帰省が近づいた。長い年月をかけて大学を卒業し、初任地である神戸で働きだして7年。学生時代は二年近く帰省しなかった時期もあったが、就職してからは毎年ゴールデンウィークと盆前後の二回帰省している。
「スイカのおっつぁん」とは、寛大がつけた名前だ。物心ついた寛大が、盆に里帰りした長男と一緒にスイカを食べて以来、そう呼ぶようになった。「スイカのおっつぁん」の呼称は定着し、実歩も「スイカのおっつぁんに会いたい」などと言う。
 小さい頃から一風変わった子で、長男にまつわるエピソードは数知れない。大学を何とか卒業し、就職までこぎつけ、いいおっつぁんになってからでも長男には開いた口がふさがらなくなることがままある。
 何年か前、初めて車で帰省した際のこと。その前に、車の免許取得にまつわるすったもんだについて話しておかねばならない。
長女も大学一年生の夏休みに運転免許を取らせたので、長男にも大学に入った年の夏に帰省した際、地元の自動車学校に通わせた。仮免許までいき、本試験を残すだけになったのだが、どうしてもサークル活動に参加しなくてはならないと言う。「時間が経つと忘れてしまうよ。取ってしまってからにしたら」と夫も私も説得を試みるも、「仮免取って、一年の間に本試験受けれるよ。向こうで受けるから」と言って、帰ってしまった。それから何度も、本試験を受けたかどうか、メールや電話をする際に尋ねたが、まだだという返事ばかり。サークル活動にのめりこんで、学業もおろそかになって単位を取得できないばかりか、運転免許も取らない。そうこうするうち仮免失効の期限が迫ってきた。失効するぎりぎりになってようやく川越まで本試験を受けに行ったようだ。結果、不合格。仮免許失効、自動車学校通いは無駄になってしまったのだ。