専業ババ奮闘記その2 懐妊②

「ヨーグルト、預かってもらえる。当分食べられそうにないに」
と、娘が言う。つわりがひどくなってきて、向かなくなったようだ。うちでも作っているカスピ海ヨーグルト、娘が大学の頃からのものだから、二十年近くになる。寒い時季は、炊飯器やコンロの近くの暖かい場所に置き、暑くなると、分離し始めたら冷蔵庫に入れる。そうして菌を絶やさずに作り続けてきた。寛大の時や実歩の時は、里帰りの際に預かった覚えがあるが、こんなに早い時季に預かることになるとは。
 お産は「たんび(度)が新た」と言われる。私の場合、娘を妊娠した初期に、一日梅干し一個と水分だけで済ました日があった。「つわりじゃない」と同僚に言われ、産科で診てもらったが、妊娠反応は出なかった。その後、食生活は元に戻り、普段通りバイクで通勤、友だちが来た時は一緒に合気道の稽古もした。その一か月後、やはり何かおかしいと思って受診したらすでに三ヵ月とのことだった。長男妊娠の際は、ポテトサラダが食べたくて、ジャガイモをゆでてつぶす手間を省くために、マッシュポテトの素を買って作っていたほどだ。貧血で、仕事中にトイレに駆け込み、周りが真っ暗になって倒れそうになったこともある。二男の時は、ミルキーを好んでよく食べていたっけ。だが、食べられなかったり、戻したりはせず、つわりは軽く済んだ方だと思う。
 娘は、毎回ひどいつわりに襲われる。妊娠初期から始まり、受け付けない食べ物があれこれ出てくるし、食べても戻してしまう。職場でトイレに入って出ると、そばにいた人が「大丈夫?」と必ず声を掛けてくるという。「もう、みんなにばれてるわ」普段、職場で大きな声でしゃべる娘が、途端に元気が無くなり、頻繁にトイレに駆け込むようになるので、すぐに気づかれるらしい。今回も、上司に報告する前から、周りの人はすでに察していたようだ。