専業ババ奮闘記その2 小旅行⑥
あと五分で五時。搭乗手続きしなくては、飛行機に乗り遅れてしまう。娘ときたら、寛大と実歩を連れて、「ちょっとパン買ってくる」と言って、私に荷物を預けたまま帰ってこないのだ。時間に急かされ、大荷物を抱えて搭乗手続きをする場所に移動する。列に並んだ途端、「どこにいる?」のメールが入る。実歩と手をつなぎ、もう片手に溶けたアイスを持った娘がその直後に現れた。「時間ないよ」と言いながら、垂れそうなアイスを受け取る。アイスなんて買っている場合じゃないのに。「寛大と実歩がパンを選ぶのに時間がかかって」と娘。その時、放送が入った。出雲縁結び空港行きは二十五分遅れとなったとのこと。体中の力が抜けると同時に、呑気な娘への苛立ちも治まってきた。
手続きを済ませ、待合の椅子に腰かける。もうすぐ旅行は終わり。今朝で薬は切れたけど、だるいながら何とかここまで体調が保てている。明日からは、横になるなり、寝込むなり、どうなってもいい。
寛大や実歩がいたから、生まれて初めて上野動物園の見学をし、パンダまで見ることができた。日頃の雑事を忘れ、叔父や叔母、従弟夫婦、ルークとまったりした時間を過ごせた。今日は、お昼を作らせてももらった。叔母の家の冷蔵庫の中は宝の箱のようで、幾通りも料理ができる食材が入っていて、見るだけでわくわくした。「この肉、使ってくれない」と叔母が生姜焼き用の肉を手渡さなければ、メニューを決めるのに迷いに迷っていただろう。生姜焼きにサラダを作り、叔母夫婦と娘たち母子と一緒に食べた。
隣に座る寛大と実歩は、道の駅で買ってもらった腕時計をはめている。「ルークと友だちになった」寛大、「ゾウがパオウっていった」と感動を口にする実歩。二人とも、この小旅行で新たな一歩を踏み出したようだ。娘は昨夕、大学時代の友だちの訪問も受けた。みんなにとって、満足のいく旅行だったのだ。