専業ババ奮闘記その2 小旅行①

 十年に一度くらい、体調がすこぶる良くない年が巡ってくる。三月の終わり頃に咳と痰が出だし、いつまで経っても治らない。家族中がインフルエンザに罹った中、私だけ罹らずに済んだというのに。義母の入院、その後の介護と、疲れが出たのだろうか。
 かかりつけ医に行って薬をもらい、服薬している間は症状が治まるが、薬が切れるとまた元の状態。ぐずぐずしていた最中、神戸にいる長男がゴールデンウィークに入る前に帰ってきた。長男の帰省に合わせて義母の百歳のお祝いをすることになっていたので、娘一家を呼び、我が家でささやかなお祝いをする。白寿の祝いの際には、最後まで硬い表情でお父ちゃんの膝から離れなかった実歩も、一年経ったせいか、場所が馴染みの家だったためか、すぐに表情が和らいできた。寛大は最初からご機嫌で、長男にえらく懐いている。娘が出産の度に世話になる産院の看護師さんが、ある時寛大の後ろ姿を見ながら、「あら、義一君だがね」と言う。その看護師さんの娘さんが長男と同学年で、息子のことをよく知っていたのだ。おっとりした佇まいが似ているのだろうか。実際長男と寛大は波長が合うようだ。
 義母の百歳のお祝いが無事終わり、翌日は長男の所望で足立美術館に行った。庭に感動した息子は、写メを撮りまくっていた。
 翌朝、息子を送り出した後、娘が寛大と実歩を連れてきた。近くの公園で遊ばせていると、寛大が咳をする。「寛ちゃん、風邪?」と聞くと、「ずっとだに。私もだし」と娘。「もうすぐ茨城に行くんだから、それまでに治さんとね」そうだ。娘たち母子との小旅行が一週間後に迫っていた。
 翌日からは、なるべく安静にと、散歩もせず、家の中で体を休めた。実際、咳も痰も治まらず、体がだるい上、腹痛まである。動く気力さえ無くなっていた。