専業ババ奮闘記その2 インフルエンザ(5)

 義母の入院が延びることになった。下血があったのだ。肺炎の方はすっかり良くなり、食欲も出だし、主治医が入院の目安としていた二週間目、退院する予定の朝のことだ。
 連絡を受けて病室に行くと、看護師さんから、大腸の検査をするため、主治医が消化器内科の先生に代わること、病室はこのままであることを告げられた。大腸の内視鏡検査は午後行われた。呼吸器内科の主治医は中堅のがっちりした体格の先生だったが、消化器内科の主治医は小柄の、退職が近いのではと思われる、穏やかな話しぶりの先生だった。
「大腸に、憩室というものができていて、そこからの出血ですね」
検査結果について先生がおおまかな図を描きながら説明をすると、
「去年、私、それでここに入院しました」
と、夫。
「親子ですねえ」
先生が微笑みながら言われた。
 夫の時と同様、三日間絶食をし、その間に再度の下血がなければ、重湯から始まる食事となる。下血は退院予定の朝の一回だけで、その後はなく、順調に回復し、予定より一週間延びて三週間で退院となった。退院したその午後にケアマネさんが来られ、今後の相談をする。デイサービスには本人が「行く」と言うので、翌日から行く手筈が整った。
 退院してきた夜は、寛大や実歩も一緒に食事をしたせいか、義母もつられてよく食べた。
 混乱はその夜から始まった。年寄りは入院生活が長くなるほど混乱が長く続くようで、連休までの約二か月は、翻弄された。体感温度が狂い、排泄感覚が狂い、時間が狂い、入院以前より介護が必要な状態が続いたのだ。