専業ババ奮闘記その2 インフルエンザ(3)
「お袋、どうした。大丈夫」
その夜、三人で囲む夕食の席でのこと。私の健康状態をいち早く、いや、家族で唯一察知してくれる息子が言った。
「なんか、力が抜けたようになって」
そう答えると、昼間の光景がよみがえった。
かかりつけ医で紹介状を書いてもらい、その足で総合病院に向かって診察を受ける。ずっと一緒に車椅子で回った同じデイサービスに通うMさんに続き、肺炎のために入院することになった。医師からは、尿検査の結果もかなり悪く、約二週間程度の入院になること、高齢のため、予期せぬ事態も起こりうることなどの説明を受ける。病室に移された義母を残し、一旦家に帰り、入院に必要なものを紙袋に詰め、一人で歩いて病室に向かった。
明日また来ると義母に言って病室を出、階段を下りようとすると、脚に力が入らない。体調が悪いわけではない。何だか体中の力が抜けてしまった感じになったのだ。
翌朝、やけに早く目が覚め、早々と台所に降りた。毎朝一番にすることは、義母の食事の準備だ。けれど、今朝はその仕事がない。部屋を覗いて様子を見、検温したり、オムツ交換したりも、今日はしなくていいのだ。その時、ようやく昨日の脱力感の意味が分かった。我が子の入院や夫の度々の入院を経験しているのに、こんな感じは初めてだ。我が子や夫の場合、入院するとやることは増え、時間的に余裕がなくなっていた。ところが、義母の場合は逆だ。これまでも多少の介護はしていたが、この一週間はほぼ全面介護。介護に費やしていた時間と労力が目の前からすっぽり抜けてしまったのだ。連れ合いの介護を終え、看取った後うつになる方の話を聞いたことがある。その方の思いが少しわかったような気がした。