老い老いに 75
2008年度に入った4月、夕焼け通信16年目は701号から始まる。紙面を埋めているのは、その年最初の号と同じ、今に続く面々の文章だ。「ニュース日記」はN・Rさん、「続人生の踊り場」はM・Iさん、そして編集長は「素人出版日記」、私は新たに「旬を味わう」を連載することになった。編集後記にはこうある。
「毎年この時季は、始めた頃のことを思い出します。ほんの思いつきがこういうことに。でも、きっと生きているってそういうことですよね」
私が「旬を味わう」で最初に取り上げたのはよもぎ。その春から長男に続き、二男も家を出ることになった。管理栄養士になると言って推薦をもらい、倉敷にある大学の寮で暮らすことになったのだ。卒業式を終えてから原付の免許を取り、中古で買ったバイクにまたがって倉敷へ向かう。私と夫が前後で挟み、線路沿いのくねくねした山道を走った際、カーブを曲がり切れずに二男は転倒。道端に生えていたよもぎを集めて汁を出し、傷口に当てて応急処置をした。
よもぎは血止めになるし、乾燥させてお灸にするなど、漢方薬として馴染みのある植物だ。菱餅を作る際に入れたりよもぎ餅にしたり、食べても美味しい。春先に出る若いよもぎを摘んでよもぎ団子をよく作ったものだが、団子粉を練って砂糖を加え、少しずつ水を入れながら40分間こねる作業は老体には億劫になり、ここ数年よもぎ団子はご無沙汰だ。
さて、寮に向かう際に転んでしまった二男、出端で躓いたせいか、学生生活は順調にはいかなかった。もともと管理栄養士を目指していたわけではない。推薦枠にあった科がそれだったのだ。新学期が始まってすぐ、バイクでまたしても転倒し、今も残る傷を作っている。単位数が足りないと再三呼び出しを食らい、その度に「頑張る」と言っていたにもかかわらず、ついにはやめてしまった。思いつきで進学し、回り道はしたけれど、寮で共に過ごした友との縁は続いている。母校にも親にも迷惑をかけたという思いが、折に触れ見え隠れする。中退経験は腕白で自由奔放に生きて来た二男のちょっとした抑止力なっているようだ。そういうことも含めて、それが生きているってことなんだなと思う。
