人生の誰彼 34 財布の中身

 連日のように新聞紙上で特殊詐欺被害の記事を目にします。ある日の新聞には230万、82万、36万、11万と4件、その翌日にも185万、93万と2件の被害記事が載っていました。これらは全国各地での出来事ではなく地元山陰地方限定の記事なのです。自然と毎朝詐欺被害の記事を探すのが日課になってしまいました。

 これだけでも吃驚ですが、これらの金額などまだ少ない方で、どうにかすると千万単位の数字を目にすることも珍しくありません。こうなってくると私の頭の中には?マークが百個くらい踊り始めます。これだけテレビや新聞などで報道されているのに何故騙されちゃうのかなと。そう思ってネットで調べてみると、被害者の中には最初は詐欺を疑ったが相手の言葉巧みな誘導に信じ込まされてしまったという事例が多くあるようです。なので自分は丈夫という過信は禁物です。

 それでも私が面妖に思うのが、偽警察官からの『あなたの口座が犯罪に使われているという情報がある。紙幣番号を調べるので金融機関から預金を引き出してください』というようなご案内です。けど自宅のタンス貯金ならまだしも、金融機関から下ろすお金はそこの金庫に入っている紙幣なのですから引き出す店舗や時間によっても紙幣番号は違ってくるわけで、そんなもん調べたって何の意味も無いことは歴然としています。落ち着いて対応すればわかることですが、不安を煽られ動揺していて考えが至らないのが特殊詐欺の恐ろしいところなのでしょう。

 正直言って自分は絶対に騙されないと断言する自信はありませんが、金銭的な被害には遭わないだろうという確信だけはあります。なんとなれば私はお金を持っていないからです。我が家の財布は妻がガッチリと握っていてちょっとやそっとでは開くことは出来ません。預金通帳やキャッシュカードも妻が管理していて、どこに有るかも知りません。だから私は一人でATMを操作したり銀行の窓口でお金を下ろしたりしたこともないのです。いつも妻が一緒です、というか一人では不安で仕様が無いからです。

 だからもし詐欺師からお金を要求されても『私の自由になるお金は財布に入っている23,852円だけなんですが、どうしましょう?年金支給日にはお小遣いが貰えるのですが』と正直に白状するしかありません。果たして詐欺師は『だったらアコムに行って金借りてこい』とでも言うのかな、言うかもね。