座付きの雑記 16 堀川ゆうれい船③

 内輪では、とても盛り上がりを感じるようになってきたのだが、肝心の申し込みがさっぱりだった。あと1週間もすれば初回を迎えるという段階に至っても、予定通り2隻ずつ運行できるか危ぶまれた。チラシができるのも遅かったし、ちまちまと配れる範囲に渡していてもたかが知れている。広報がちっとも進んでないのは明らかだった。いつもの寄席なら客の入りなどさほど気にならないのだが、乗船料を当て込んでの事業となると、売れていないという現実は重くのしかかる。ジジババなら孫かわいさで乗ってくれるだろうから、と、こうなったら親族で船が固まるもやむなし、という話が出てきて、成績の上がらぬ営業マンのごとき重い気分になった。

 こども寄席は、主催者の考えでいくばくかお礼をいただくことはあるが、基本的には無償だ。少なくとも商いではない。ところが「堀川ゆうれい船」は、乗船する大人もこどももみんなからお金を取るのだからりっぱな商いである。なんとなくそこは気になりながらも考えてこなかったのであるが、無料のもたらす良くも悪くももたれあう関係性を金が間に入ることでキリッと引き締められはする。2500円に見合った内容が提供できなければ次がないというだけでなく、落語教室もたいしたことない、という風聞さえ生み出しかねない。この種の緊張感は毎度だとくたびれてしまうが、時々混ぜるにはいいものだと思う。金で買うのは投票と同じで、支持表明だと何かで読んだが、確かに子どもたちの積極的な工夫は、支持を得んがために知恵を絞る選挙活動に似ている。

 ジジババ頼みというのは、そんな機運に水を差すような気もして、ともかくぎりぎりまでがまんしようと思った。その矢先、堀川遊覧船の働きかけで報道関係者を事前に乗せるプレス船が出ることになった。1回は、新聞社や民放テレビ局を対象に、2回目はNHKテレビのために。いずれも初回と2回目の運行日の二日前というギリギリのタイミングだったが、放映後に申し込みがちょうどよい感じで入って、全四回とも無事に満席となった。新聞、テレビの力はやはり大きかった。

 さて、四回に及んだ「堀川ゆうれい船」。子どもたちや保護者の達成感は大きなものがあったようで、ぴたっと時間通りにいったときは「ガッツポーズが出た」と言う人もあった。乗船者のアンケートを見たら、価格設定は、「ちょうどよい」が最も多かった。「これより高くても乗る」もいくらかあったが、「高かったら乗らない」もそれなりにあった。初体験のドタバタを差し引いても、まあ及第点というところか。