老い老いに 40

 2000年度の夕焼け通信は、本局が横田、支局が松江、出雲郷、隠岐の三つのまま始まった。内容はというと、Y氏が新たなタイトル「松次郎じいさんの遺書」で、短歌を織り込みながら綴り、M・Iさんの「漫画道楽記」も雑誌、映画等から話題を取り上げては掲載を続けている。K・AさんやT・Hさんの詩も毎号ではないけれども、夕焼け通信にアクセントをつけてくださった。「看護・今、むかし」のM・Nさんからは自身の看護師体験等々のエピソードが、T・Tさんからは関釜裁判について裁判の度に報告文が届けられた。前年度から投稿下さったY・Yさんの「タイマグラ便り」、出雲のK・Mさんからの「出雲弁時評」という方言の話題も夕焼け通信に時折新鮮な空気を吹き込んでくれた。

 そして、講演録が二つ。一つはこの年の2月に横田で行われた志村真氏の講演「カルトって知っていますか」。キリスト教の牧師であるかたわら、統一教会問題やオウム真理教問題に取り組み、信者や家族のカウンセリングに関わっておられる方だ。1995年に起きた地下鉄サリン事件で日本中を震撼させたオウム真理教、安部元首相銃撃事件を機に一気に世間の注目を浴びるようになった統一教会を主に取り上げ、カルトにまつわる当事者や家族、様々な問題について掘り下げて語られている。講演録が終わってからも、「オウム/カルト問題のその後」という続編まで綴ってくださった。

 もう一つは、同年7月にやはり横田で行われた浜田寿美男氏の講演「ありのままを生きる」と題した甲山事件始末記「甲山事件の25年から学ぶもの」だ。浜田氏は発達心理学・法心理学を専門とし、冤罪事件における自白や証言に至る心理を分析、供述鑑定にも携わっておられる。ここでは、1974年に兵庫県西宮市の知的障害者施設甲山学園で起きた二人の園児の死について取り上げ、講演されている。副題にもあるように決着に25年かかったその事件、裁判についての詳細を語られた。障がい児教育に携わっていたこともあり、毎回興味深く読んだものだ。

 横田での暮らしに馴染んできている編集長は、「続ど素人畑作日記」を引き続き連載。前年に短編小説めいたものに挑戦していた私は、「忘れられゆく言葉たち」を連載することになった。