座付きの雑記 6 ネット工事その後

 待てども待てどもネット開設工事に至らない。業を煮やして電話をしたら延期を言われた。無償レンタルのモバイルルーターを送ってもらって、最低限のことはできるようになったが、先日また延期の電話がかかってきた。延期が二度に及ぶということは三度目もあるかもしれないということか、と聞くと、否定できないという。なぜそんなに遅れるのかと聞いても、こちらに知識がないせいもあろうが釈然としない。たまらず、別の某社に電話をした。これまでの経緯を洗いざらい話して、どうしたものだろうかと相談すると、言葉は慎重だったが、要するに二股をかけろ、と言う。当社とも契約して、工期が両方から出たのを見て、一方を契約、他方をキャンセルすればいい、と。なるほどその手があるのか、と蒙を啓かれる思いがし、その社に対するイメージが急上昇した。促されるままに手続きをし、工事を申し込んだ。聞いたことのない関連会社の名前をいくつか上げると、すぐにその会社から連絡があって、同じような必要事項を尋ねるから、お手数だが答えてほしいということだった。面倒だったが、「お客様のネット環境が早く整うように努めます」と先の会社が決して口にしなかった殊勝なことを言うので、協力を惜しむまいという気持ちになった。

 数日後、昼寝をたたき起こされて電話に出てみると、わずかに聞き覚えのあった関連会社からだった。「ネット工事新規申込みのお客様にお得なキャンペーンのご案内です・・・」ウォーターサーバーが今だと無償でお送りできますと言う。ぼんやりした頭で、なぜそんなものを送ってくるのか理解できず、徐々に音声が遠のいていったが、向こうはなぜこんなお得なサービスに素直に従わないのだと言わんばかりに早口でまくしたててきた。「今、物は何もいらないのです」とどうにか断る。

 その翌日、また別の関連会社にたたき起こされる。

「電気料金がお安くなります。ネット工事お申し込みのお客様対象の・・」立て板に水のまったく澱むことのない説明がしばらく続き、「ここまでで、ご不明な点やご質問などありますか?」。ご不明なのは点ではない。すべてだ。あなたの言っていることがさっぱりわからない。これで言われるままに契約に及べば、特殊詐欺にひっかかるのと何ら変わらない。

 これだけ何の滞りもなくしゃべられるようになるまで、どれだけ同内容を繰り返したことだろうかと、苦労している落語教室生たちの顔を思い浮かべた。

 うんざりしたぼくの中で、今、遅れるとしか言ってこない会社のイメージの方が回復してきている。