がらがら橋日記 にこにこ寄席千穐楽

 奥出雲町立高尾小が来月をもって閉校になる。高尾小ばかりでなく、かつて十校以上を擁していた奥出雲の小学校は、2026年度には2校となる。ぼくが勤務していた2000年代初めの十数年も児童数の減少は明らかだったが、ここへきて加速した感がある。

 高尾小学校に赴任したのが12年前で、極小規模と言われながらも全校児童が10人以上はいた。それから年を追うごとに一人、二人と減っていき、閉校となる今年2025年度は3名である。

 この欄にはしつこく書いてきたので、改めて書くまでもないのだが、高尾小学校は、その12年前に始めた落語を減っていく児童数をどこ吹く風とばかりに維持し続けた。

 しかし、ついにそれも閉校と同時に終わる。先日、高尾小学校から案内が届いた。そういうことなら行ってみようかと思われる向きもあるかもしれないので、日時などあげておく。

・日時 3月1日(土)午後1時30分開演、終演予定午後4時。

・場所 奥出雲町立高尾小学校体育館

・出演 高尾小学校児童3名、にこにこ寄席応援団、さらに特別出演として三遊亭楽麻呂さん。

・入場無料だが、申し込みが必要で、電話は0854-54-9030、古澤教頭まで。

 なお、天気次第だが3月でも寒いときは雪が降ったり氷が張るほどなので、防寒対策は必須である。

 ぼくが今、落語教室で子どもたちと相対していられるのは紛れもなく高尾小学校のおかげであるから、12年分の感謝の思いを抱いて当日は学校に向かうつもりだ。

 さて、出演にある「にこにこ寄席応援団」とは、先生と子どもの漫才ユニット、高尾小落語家OBに加えて、我が落語教室生も含まれる。この子は、奥出雲とご縁浅からぬこともあって、2歳の時から家族といっしょに「にこにこ寄席」に度々来ていた。年に数度であっても三年四年と通えば、自然と落語が体に馴染む。そして自分もやりたくなって入塾に至り、今では長尺のネタをいくつも持つまでになっている。つまり、ぼくと同じく落語について言えば、高尾小学校に育てられたようなものなのだ。

 閉校と言えば、地域の人にとって絶えるというイメージが抜きがたくあるだろうが、そうとばかりは言えない。心を込めたものは時空を越えて飛び火する、とスーザン・ソンタグが説いたように、一つの希望を教室生に見る人もあるだろう。