北海道への旅、三度目 15
事故に遭った縁起の悪い車というより、激しい衝撃から守ってくれた車であることの方を選んだ私は、次にTさんが来られた日「前のと同じにします」と答えた。
新しい車が来たのは10月28日、事故から1か月半近く経っていた。これまでずっと車両保険に入っていなかったので、相手側の保険でも新車代全額とはいかず、少し手出しがあった。娘や息子からも言われ、今回入る保険には車両保険を追加することにした。
翌日、色も形も同じでナンバーだけが違う車に乗って畑に向かう。道路の白線の上にかかると「ピピピピピ」と鳴り、夫が「はいはいはい」と答える。一か月半ぶりで妙に懐かしい。
その新しい車に乗り、半年あまり経った5月の連休明け、私はとんでもないことをしでかしてしまう。その日は土曜日で玉湯に子守に行き、夕方孫たちを我が家に連れ帰り、仕事帰りに娘が寄ることになっていた。家の横の車庫に娘の車は入らないので、いつも置いている駐車場ではなく車庫の方に入れようとバックしている時だった。いきなり車が暴走し、車窓の景色が超スピードで流れ、ドカンという音と共に停まった。その間、何が起きているか分からずじまい。まずは後部座席にいた寛大と隣にいた実歩の無事を確認し、車を降りたところに夫が「何した」と家の中から飛び出してきた。「いや、何が何だか分からんのよ」と言うと、「前の道路で車がぶつかったかと思って出てみたら、うちじゃないか」とあきれた顔を向ける。「寛ちゃん、実歩ちゃん、大丈夫?」降りて来た二人にもう一度聞くと、「大丈夫だけど、音にびっくりした」と実歩。夫は早速車屋さんに電話を入れている。孫たちを家の中に入れ、おやつを食べさせている間、車庫の様子を見に行った。塀のブロックが割れ、中の鉄柱が露わになっている。ミニトマトが植わった鉢は片側が割れ、アオジソのプランターの一つはアオジソごとぺちゃんこ、もう一つは半壊している。倒れたカブのテールライトのカバーが欠け、セメント床にはその赤い破片やらカーポートの屋根を留めている傘釘やらが散乱している。バックする際、いつものようにゆっくりゆっくりアクセルを踏んだはずなのに…。目の前の光景を眺めているうちに、恐怖感がじわじわと寄せて来た。