空き家 5 生家の行く末③

 

 半年くらい前のこと、夫の従弟にあたるHから電話があった。Hは高校卒業してからずっと東京に住んでいて、数年前家庭を持った。義母の妹(私や我が子たちはSのおばちゃんと言っていた)の息子で、家は歩いて2~3分の近所にある。十数年前に亡くなったSのおばちゃんは、元気な頃「おばちゃん」と義母を訪ねてよく我が家へ来た。年が十近く離れているので、姉さんと呼ばず、おばちゃんと言っていたのだ。

 Sのおばちゃんには娘もいるが、息子同様東京近辺で家庭を持っている。連れ合いを亡くした後、Sのおばちゃんは一人暮らしになり、我が家へ頻繁に来るようになったのはそれからだ。そのおばちゃんも亡くなり、家が空き家になってからはHが年に一度くらい家を開けに帰っていた。けれども、家庭を持ってからはとんと帰って来なくなった。

 そのHが電話してきた内容を夫から聞かされた。

「大分前に、近所のFさんが、家を買わしてくれって電話してきたらしいんだけど、その時は売る気がなくて断ったそうだ。だけど、もうHもこっちに帰る気はなくなって、Fさんにまだ買う気があるかどうか聞いてみてくれって」

 その後、夫がFさんの家に行って話を聞くと、以前家を探していたのはFさんの奥さんの妹さんで、すでに他を当たってそこに入居しているとのことだった。HもFさんから話があった頃は家を手放すつもりはなく、いずれ郷里に帰って住むつもりだったのだろう。けれども、家庭を持ち、連れ合いとの話し合いを重ね、その思いは薄れていったようだ。

 先日、Hの家の前を通ると、家はすっかり無くなり、新しい家が建とうとしている。帰って夫に話すと、「へえ、売れたんか」との返事。それからしばらくして、娘と孫たちが来たので散歩に出て帰ると、「お前たちを探しに歩いたついでにSの家に行ってみたら、もう家が建ってるね。建売って書いてあったわ」と夫。うまく業者の買い手がついたのか。Hの決断、行動力、見事なものだ。