がらがら橋日記 自然菜園
たまたま妻が東郷湖畔の古本屋汽水空港で勧められて買って帰った一冊がきっかけになった。ぼくも前から行きたいと思っていた本屋さんなのだが、まだ行けていない。せっかく妻が先に行って一冊得たのだから、ぼくがいつか行ったときには、この本が及ぼした作用を土産にしよう。
去年の夏に畑を借りることになって、今年で二度目の夏から秋を迎えた。初めは手取り足取り、種や苗、農具まで提供して教えてくれたNさんだったが、「いつまでも甘えちょーなよ」とばかりに、この夏からはまったく放任になった。Nさんのホームファームからはちょっと距離があるので、今夏の異常な暑さに「もう勘弁、そっちでやってごせ」となっても何ら不思議ではないけれども。
前年教わったとおりにやってもよかったのだが、自主性を欠いた畑作の帰結として、どこに何を植えていたのだったかよくわからなくなってしまったのと、一昨年何が植わっていたのかぼくには知るよしもないのとで、連作障害対策が七面倒くさくてやる気が殺がれていた。
妻がその本を手にしていると、汽水空港のご夫妻が、
「その本、すごくいいですよ。うちもそのやり方で野菜作っていますよ。」
と声をかけられたそうで、俄然妻も興味をひかれたらしい。以後ずっとダイニングテーブルの上に置いて、頻繁に見ている。事典のような使い方もするので、手元から離せない。
『1㎡からはじめる自然菜園』というのがその本である。今のぼくの理解で概略をまとめると、耕すことも施肥もしない。農薬も使わない。1㎡単位で循環型の環境を作り、野菜同士の相性や適性に合わせて連作を可能にする。昔伊藤ルイさんに勧められて読んだクロポトキンの『相互扶助論』の畑作編といった感じだ。植物、昆虫、土中の微生物などの相互扶助によって野菜にも土にも負担をかけない持続可能な野菜づくりを目指す。。施肥はしないというよりそこにあるものを使うと言った方がいい。1㎡の周囲に麦やクローバーなどの草を育て、肥料、避暑、避寒、保湿など様々な用途に使う。収穫の効率を上げる必要がなく、去年などかえって取れすぎて困ってしまった暢気な耕作者にとっては、ぴったりである。クリムゾンクローバーは咲いたら花畑みたいになりそうで期待が膨らむ。
初めからうまくいくはずないと思っているから、理科の実験をしているような心持ちで、畑を見に行くのが実に楽しい。