人生の誰彼 16 徳川光圀VS柳沢吉保

 

 BS-TBSで平日夕方に再放送されている『水戸黄門』を見始めてから1年が過ぎました。佐野浅夫さん版終了後、石坂浩二さん版は何故か放送されず、里見浩太朗さんのシリーズに代わって暫くしてから唐突に東野英治郎さんの初代黄門様に戻って3シーズン放送された後、再び里見黄門様になり現在進行中です。

 里見黄門様を長らく見た後に初代の東野黄門様を改めて見ると隔世の感があります。何せ40年の時の流れがあるので当然と言えば然りですが、お馴染みの勧善懲悪物語に慣れた身としては初期のシリアスな展開には戸惑いました。

 例えば第3部の最終回で光圀が宿敵柳沢吉保と対峙して、その所業を断罪し隠居に追い込むシーンがあるのですが、もひとつスッキリしないのです。悪役が打ち負かされればカタルシスが生まれるものですが、山形勲さん演ずる吉保が悪あがきせず潔く罪を認め身を引く姿を見ると逆に気の毒な気分になってくるのです。それは何故かなと考えるに、光圀役の東野英治郎さんの頑固な面構えと説教臭い台詞回しが強烈すぎて、落着いて品のある喋りの山形さんの方が良い人に見えるからなんですね。情が入って正義が悪を懲らしめる図になっていないのです。

 それに比べると凛々しく優しく穏やかな里見浩太朗さんの光圀が、憎々しい悪人面(失礼)の石橋蓮司さん演じる吉保の悪企みを砕くと、蓮司さんが苦虫を1000匹くらい噛み潰したようなしかめっ面をして「おのれ光圀め、覚えていろ!」と地団太踏むところを見ると「ざまぁみろ!」となってスカッとするわけです。

 このドラマを飽きもせず見続けている人は、毎回形は変われどこの「ざまぁみろ!」を求めているわけで、初期のシリーズに見られるドラマ性重視の絵面よりも、マンネリと言われながらも大人向けのヒーロー物に徹した痛快時代劇である後期のお話しのほうが世相の軽さと合わせて長く続く要因となったのでしょう。

 それと現在放送中の第41部では、今見ると笑ってしまう展開があります。新婚の助さんがご老公と旅に出た後、残された新妻が女好きの夫(助さん)が浮気をする夢を見て心配で居ても立ってもいられず駕籠に乗って追っかけちゃうのです。で、何が可笑しいかっていうと、この色男の助さんを演じているのが後に4WD不倫騒動を起こした原田龍二さんなんですね。けだしハマリ役です。