空き家 11 生家③

 30年余り前に切った杉に代わって庭に我が物顔で突っ立っているのは欅だ。どこから飛んでくるのか、勝手に生える木がある。トベラや車輪梅は低木だからいいけれど、こんな巨木がやって来るとは。週1、2回畑に通う際は、草取りなどの作業に追われ、気が付かないうちに家の屋根を超えてしまうほどになっていた。杉はまっすぐ上に伸びていたが、この木は、枝を四方八方に広げ、庭の広い範囲に影を落としている。

 落葉樹なので冬には葉を落とし、さほど気にはならない。しかし、春になると新芽が出て、今の時季から枝にはびっしり葉が生い茂る。数年前から、枝を切ってはいるのだが、すぐに元通りになり、さらに成長をし続ける。幹は太く、とてもノコギリなどで切れはしない。下手をすると、屋根に倒れて家をつぶしてしまう恐れがある。「この太さだからな。切る自信ないな」と夫は呟く。

 もう一つ、これは植樹したので文句は言えないが、プレハブの道路側に植えたヒバ。常緑樹だから、築地松代わりにと思ったのだ。10本も植えるのではなかった。これも、枝は広がるし、背は高くなるし、厄介だ。道路に面しているので、枝が伸びてくると車が通るのに邪魔になる。だから、まずは道路側の枝を落としていく。家の側は、脚立からプレハブに上って夫が切り、落としたのを私が始末するという分担で毎年やっていた。が、プレハブを一昨年撤去したので、脚立だけだ。上が切りにくいので、適当なところでばっさりやってしまわねばならない。

 元からある木は2本の山茶花と百日紅。山茶花は父が手入れをし、形を整えていて、寒くなると、片方には少し桃色がかった赤、もう片方には真っ白な花が見事に咲いていた。今でも、花はちらほらと咲いてはくれるが、枝はまばらで、貧相な形のまま、欅の根元に何とか生き残っている。百日紅も元はすっくと立っていたのだろうが、今や地を這うように息づいている。それでも、夏になると地べたで白い花を咲かせてくれている。

 ヒバは何とか処理できるけれど、欅は近々業者に頼むなりして、伐採しなければと思っているところだ。