専業ババ奮闘記その2 コロナ感染③

 

 抗体検査を受ける朝が来た。大方は覚悟しているのに妙に落ち着かず、夜中に何度も目が覚めた。娘の部屋のベッドから起き上がり、まずは洗面所に降りて洗濯機をかけ、台所に行って朝食を作る。夫の部屋に持って上がり、「ご飯だよ」と襖の前に置いて降りた。息子は、私の調理したものさえ触れない徹底ぶりで、私たちが終わった後、自分のを作って部屋で食べる。もちろん、家の中でも全員マスクをし、触れた所には消毒液を噴霧する。

 午前中、息子と一緒に抗体検査に行き、午後には夫の入院が決まった。高脂血症、狭心症の持病があるためだ。そして、息子と私の結果も夕方には出た。息子は陰性、私は予想通り陽性だった。これまで感染が怖くて仕方がなかった。しかし、いざ感染したとなると、これで怖がることはないのだと、妙な安心感に覆われた。が、そう思った次の瞬間から、息子に感染させたらどうしようという一層強い不安が襲ってきた。とにかく、近づかない。これまで居た娘の部屋を引き払い、私は一階で、息子は二階で過ごすことにする。布団を居間に運び、トイレも私は一階のみ、息子は2階を使う。どうしても共用となる洗面所は、私が使ったあとは消毒液を撒く。もちろん使う道具、材料はすべて別。台所も同様で、私が使った後は窓を開けて空気の入れ替えをし、使ったものには消毒液を散布する。息子とはそういう取り決めをして、その夜は久々によく眠れた。

 翌日、夫を病院に送る。指定されていた駐車場に車を停め、夫がメモしていた番号に電話をすると、ビニールで覆われた車椅子を押した看護師が迎えに出て来た。ビニールで周りの空気と遮断された夫は、病院の中へ消えて行った。

 帰って、一階の掃除にかかる。すると、2階からも掃除機の音が聞こえて来た。暇つぶしなのか、気分転換なのか、結構長い時間ごとごとと音がしていた。

 夕方保健所から電話があり、私は自宅療養になり、明日、新型コロナ対応の医師や看護師、薬剤師から連絡が入るとのこと。息子は濃厚接触者ということで一週間自宅待機するよう言われる。これから一週間、息子にうつさないことが私の目下の課題だ。