がらがら橋日記 グランドゴルフ 2

 

 ゴルフをやらないので、同世代の男たちがゴルフ談義に花を咲かせていても中には入れないのだが、話の中身や表情口調などからさぞかしおもしろいのだろうなと思う。だがやってみたいと思ったことはない。道具をそろえるとか、ゴルフ場を借りるとかがそもそも面倒だ。スキーをする気になれないのも同じ理由だ。好きな人は、そんなことを面倒に感じることが理解できないに違いない。

 ゴルフ保険を知ったときは、つくづくやらなくてよかったと思った。ホールインワンを出すと友人知人に振る舞わなければならないのだそうで、多額の出費に備えた保険商品があるという。なぜそんな慣習があるのかから理解できない。とても手に負えない面倒くささだ。

 グランドゴルフが始まった。五人ずつのグループが編成され、リーダー格の老人が進行役になっていた。何も知らないので教えてほしい、と頭を下げたら、にこにこしてていねいに教えてくれた。各ホールの癖などにも精通していて、言われた通りに打てれば確かにうまくいった。このホールはああでこうで、と話を聞いていた近くを、別のグループが通り過ぎていった。

「ほお、○○がべらべら講釈始めたで。」

と聞き覚えのあるだみ声が聞こえた。少し前に傾いだがっちりした背中が見えた。ぼくの名を大声で読み、父を知っていると言った老人だった。幸いリーダーには聞こえていなかった。聞こえたところで、どうってことない間柄なのかもしれないが。

 誘われたら乗ってみる。自分の好きなことをする。教えられた退職後の心がけ。退職すればあれこれ失うのだから、せめて嫌なことはしないぐらいの意地は通してバランスを取りたい。ただ、好きか嫌いかは事前の予測があまりあてにならないから、とりあえずやってみようと思うのである。

 グラウンドゴルフは、前半こそなかなかおもしろいと感じ、褒められていい気になったりしたが、だんだんと退屈を感じ始めた。終わってみたら、とても初心者らしいスコアで、あれこれ設けられた賞にもひっかからず、全員配布のサランラップをもらった。結果には満足だったが、ゴルフはやっぱり好きでもないとわかった。

 グループみんなに気を配るじいさんとひたすら自分の記録を追うばあさん、口の悪いじいさんに誰がどう打とうとにこにこしているばあさん。それを端から見ているじいさんであるぼくは、人集まればどう切り取ってもこんな配剤になるもんだと何だかそれがとてもおもしろかった。