専業ババ奮闘記その2 冬①

 

 今年の冬は、気温が低く、降雪量も多いという予報だ。師走に入り、最高気温が10度ちょいの日が続いた。幸い玉湯に行く日の予報気温は高く出ていた。

 実歩も宗矢もまだ朝食中。宗矢はミカンをむいた皮を差し出し、「かわ」と言った。自分のことを「ちゅう」、寛大のことは「かんかん」と言う。「みほ」は難しいらしい。

 娘と、実歩、宗矢を送り、まずは寛大の宿題に付き合う。その後、絵を描いた。虫の図鑑を見ながら、スズメバチ、カマキリを描き、魚の図鑑からはカジキを選んで描いていた。

 晴れてはいないものの暖かいので、外へ出てボール蹴り。オフハウスで買ったもので、重くて跳ねないが、庭で蹴るにはちょうどいい。しばらくして、今度はバドミントン。家の屋根や車庫の上まで飛ばさないよう気を付けていたのに、車庫の上に乗ってしまった。「この前、お父ちゃんが上がって取ったよ」と、寛大が折り畳み式の脚立を指さす。「ここをこうして」と、組み立て方を教えてくれた。忠ちゃんがするのを見ていたらしい。車庫の屋根の一番低いところに脚立を立てかける。危ないので寛大に上らせるわけにはいかない。「ばば、おれが持っちょくけん」と寛大が下を支えてくれる。ゆっくりと上まで行き、屋根の上を見回すと、中央より向こうに薄緑の羽が見えた。屋根に膝を掛けると、少し揺れる。背筋に冷たいものが走る。日御碕灯台の上で長男にしがみつき、蒜山高原の観覧車の中では二男の膝の上に伏せていた自分の姿が蘇る。羽を取る一心でここまで来た私は、実は高所恐怖症だったのだ。揺れを気にしながら、震える膝を進めていく。羽の位置までが長い。ようやく羽を手にし、ゆっくりと後ずさる。そして、脚立に足を、寛大には「持っててね」と声を掛け、慎重に降りて行く。「バドミントン、もうやめようね」と言うと、肩から力が抜けた。

 その日は早めに昼食を摂り、歯科へ。寛大の歯の矯正のためのマウスピースを取りに行き、つけ方などを聞いてきてくれと娘に頼まれたのだ。これまで見て来た針金で組んだようなものではなく、弾力のあるプラスチックみたいなものだ。寝ている間と、日中一時間程度口に入れるのだそうだ。口をとめるテープと、説明された言葉をしっかと受け取って帰った。