専業ババ奮闘記その2 秋⑦

 

 娘たちの家は玉湯の湯町にある。すぐ近くにおもじろ釜という湯が沸き出ているところがあり、温泉卵を作りによく客が来る。この釜が玉造温泉の温泉源だそうで、家の横には結構な頻度で管理をする人が来て、作業を行っている。

 11月に入り、歩くには絶好の季節になった。寛大と過ごす土曜日、「ババ、足湯行こうよ」というので、水筒とタオル、そしてマスクを持って、温泉街まで歩いた。「あ、あそこに鯉がいる」「トンボだ」と寛大はあれこれ見つけては何度も立ち止まる。私はどうしても畑の作物に目が行ってしまう。玉湯川沿いを温泉街へと進んでいく。観光客がちらほらと見え始めたので、「寛大、マスクつけて」と言う。「下に降りたい」と寛大が言うので、橋の付け根についている階段を降り、川べりを進むことにした。大きな石を見つけては上がり、「落ちるよ」と声を掛けながら歩いて行く。そのうち、川の水から湯気が立っているところに着いた。本流とは石で区切られていて、高めの湯とぬるめの湯も仕切ってある。「これが本当の足湯だね。入るか」と言うと、「ええ、いつもの足湯がいい」と寛大が言うので、ゆうゆの近くの足湯に行ってみた。けれども、まだ早すぎるのかロープが張られている。そのまま史跡公園へと上がり、トンボ捕りなどして、再び足湯に下りた。それでもロープのままだったので、川辺の足湯に浸かりに行った。最初はぬるめのお湯に入り、次は高めの湯へ。コロナ禍のせいか観光客はまばらで、足湯は貸し切り状態。何とぜいたくな体験だ。寛大は川の方に足を浸け、「冷た」と言って、また足湯に入って来た。北海道に夫とツーリングした時、網走方面から南へ向かう途中、羅臼川沿いの温泉に入ったことを思い出す。熊の湯という地元の人たちが管理している温泉だった。小さな小屋があり、風呂は露天、白濁した湯に浸かりながら、最上のひと時だった。足湯に浸かりながら、同じような気分に浸っている。「お母ちゃんたちとも来たいな」と寛大は言いながら、タオルで濡れた足を拭いていた。

 その次の土曜日も、行先は足湯。今回はお弁当を作り、足湯に浸かった帰りには史跡公園でトンボやバッタを追いかけ、弁当を広げた。秋満喫の一日となった。