専業ババ奮闘記その2 二人暮らし①
息子が福井に2か月ほどヘルプで行くことに決まる半月ほど前、長男が小田原から御殿場に転勤になった。コロナ禍で、連休にも帰れなかった長男の小田原暮らしは一年とちょっと。事務所として借りていた一軒家に住まわせてもらい、富士山を見ながら通勤するとのことで、一度は行ってみたかった。長男によると、御殿場は静岡県になるけれど、小田原から車で30分ほどの距離だとのこと。社員寮暮らしになり、富士山噴火の恐怖はあるけれど、自然環境には恵まれているようだ。何より、神戸でお世話になった先輩とまた一緒な勤務先になったというのが心強い。コロナが収まったら、今度こそ御殿場のみならず、小田原にも行ってみたい。
さて、二男が行く福井とは、どんなところだろう。舞鶴と金沢は行ったことがあるけれど、その間に位置する福井に足を踏み入れたことはない。日本海側で、原発があり、コロナ感染者が割と少ない。何だ、島根と似ているではないか。
6月最初の日曜日、朝からあれこれ準備をし、8時前に息子は福井に向かった。私にしてやれるのは、お昼の弁当を作るくらい。2月に義母が亡くなり、心に空いた隙間がふさがらないうちに、また一人家族が居なくなる。朝は息子の食事準備をする必要がない。「今日は何?」帰ってくるなり、夕食メニューを聞く声もなく、作る楽しみも半分以下になってしまった。おかずは減らず、残り物が何日も冷蔵庫に居座っている。夫と二人の夕食時、夫に話しかけられても、返事をする気さえ起こらない。
そんな日々に、活力をくれるのは孫たちだ。迎えを頼まれると、夕食は何にしようかと、3人の孫たちの顔を思い浮かべながら考える。休みの日に、娘が孫たちを連れてやってくると、一日中振り回されながらも、苦には感じない。しゃべり通しの娘が、「寛大は完全に反抗期だわ」と言う。「あんたは、産まれてからずっと反抗期だったがね」と返してやる。その寛大も、実歩も、宗矢までブロックで遊んでいる。今まで、お兄ちゃんやお姉ちゃんが作ったブロックを壊すだけだった宗矢が、ブロックをはめるようになった。そんな些細なことに、心が浮き立ってくる。