専業ババ奮闘記その2 職場復帰③

 

 義母が再入院した日、同意書を持って夫が行くと、主治医から、「浮腫がひどく、溜まった水が肺を圧迫しているために、血中酸素濃度が低くなっていると思われます」と言われたという。家では血中酸素を測ることなどできない。ショートステイ様様だ。

 翌日、託児所で宗矢を、保育所で寛大と実歩を迎えて我が家に連れて帰り、夕食を食べさせていると、仕事を終えた娘がやってきた。コロナ3波により病院での面会ができないので、職場復帰したばかりの娘のおばあちゃん情報が頼りだ。息子も帰ってきて、一緒に様子を聞く。「話はできるけど、かなりやばいね」と言う。病院に勤めて十数年、たくさんの患者さんをみてきている娘が言うので確かだろう。「転院はあっても、ショートステイに戻ることはないと思うよ」と付け加えた。

 娘の言葉が現実になった。病院から連絡が入ったのは、その2日後。「ばあさん、急変したらしい。すぐ行こう」と言う夫に、「雄二、仕事もう終わってる頃だから、帰ってきたら一緒に病院へ向かうわ」と返し、すぐにメールを入れた。

 息子の車に乗り込み、病院に向かう。病室に入ると、義母は酸素マスクを付け、大きな息をしていた。夫だけでなく、娘もいて、「昼休みに寄った時は、みんな元気かいねって言ってたけどねえ」と呟く。息子が義母の手を取り、「ばあちゃん、ばあちゃん」と言うが、目は閉じたまま、息を深く吸い込んでいるばかりだ。と、息子は、「兄貴に連絡する」と、長男にラインを入れた。研修中だったにも関わらず、ラインを返してきた長男に、スマホで義母を写して見せる。スマホから「ばあちゃん、ばあちゃん」と呼ぶ長男の声が聞こえてくる。義母に一番可愛がってもらった長男は、飛んで帰りたい思いだろう。

 師長から言われて一旦帰り、再び電話がかかったのは11時過ぎだった。「こと切れたらしい」という夫と二人で向かった。大きく打っていた胸はもう動いていなかった。死亡確認に主治医が来られたのは日付が変わってからだが、実際は入院後3日目のこと。長く苦しまなかったことが救いだ。義姉と姪もやってきて、義母の顔を眺める。「こんなに綺麗なお母さんの顔、初めて見たわ」と義姉。私も同じことを思っていた。