専業ババ奮闘記その2 義母の病気②
「木幡さん」と呼ばれ、診察室に入った。泌尿器科の先生の前に、車椅子の義母、そして両側に夫と私が並ぶ。先生は、約一時間に及ぶ検査の労をねぎらい、まずは血液検査と尿検査の結果について、プリントアウトされた紙を示しながら説明された。貧血があることと腎機能がよくないこと。これは、一年半前にインフルエンザによる肺炎で入院した際も、当時の主治医から聞かされていて、万が一のこともありうると言われていた。あれからまた歳を重ねたので少し数値が落ちてきているようだ。
次に、パソコンに写されたCT画像を示される。「上の方から見ていきましょう。まずは心臓ですね」と、心臓の内部に白く映る部分を指す。「周りに水が溜まっています」肺の画像にも同じように白いが所があった。脚だけじゃなく、内臓にまで水が溜まっているのか。大動脈には三センチくらいの瘤があるとのこと。ここまで聞いて、納得した。「目がへん」「息苦しい」「熱がある」と度々呼ばれ、その度に、体温計や血圧計を持って行って、熱や血圧を測った。平熱だし、血圧も正常範囲内のことが多く、「大丈夫ですよ」と言っていたが、大丈夫ではなかったのだ。こんな身体で心持が良い訳がない。「生きることは大変です」も口癖で、「はあ、もういいわ。嫌んなった」「早くお迎えが来んだらか」などと言うこともあった。そのうえ歩くこともできなくなり、気持ちがどんどん落ち込んでいったことだろう。ドンドンと訴えることしかできなかったのだ。不機嫌になって当然。「与えられた命だから」と自分に言い聞かせるようにもしていた。どうにもならない身体を、どうにもできずにいる苦しさ。義母は一人置かれた部屋の空間でもがき続けていたのだ。
身体全体の状況が、詳しい説明で良く分かった。「いろいろ問題がありますが、今すぐどうということはないです。そして、肝心なところ、痛みがきた膀胱です」いよいよ問題の箇所に焦点を当てる。「ここに腫瘍があって、壁のこの部分の神経を圧迫しています。それで痛むのです。木幡さん、痛かったですねえ」と、義母に声を掛けることも忘れない。この先生に任せたら安心だ。この時点で、肩の荷がどさっと落ちてきた気がした。