専業ババ奮闘記その2 虫捕り⑤
市内の小中学校が五月二十五日から再開すると報じられた頃、「来週から寛大と実歩を保育所に行かせようと思って。二人とも、おうち生活で大分ストレスが溜まってるに」と娘が言った。義母を送り出してから玉湯に行って子守、家に来た時は義母の様子を見ながらの子守。子守が無くなると、身体の負担は少なくなる。でも、孫たちと毎日は会えないのか。
寛大と実歩が保育所に通い出した日、義母をデイサービスに送ったあと、畑に出かけた。キャベツとブロッコリーの苗が大きくなってきたので、夫はそれらを移植するところを起こし、施肥、私はオクラとインゲンの種蒔きだ。種を蒔く所の草の根を取ろうと土をさぐると、カヤツリグサの根が無数にある。これまで地中深くまで白い根を張り巡らせるカヤに苦しめられ続けてきたが、今やカヤツリグサが取って代わっている。直径一センチくらいの黒い球根から黒糸のような物が延び、どんどん球根を増やしていく。それらが土の中からごろごろ出てくるのだ。種を植える前に取り除いても、野菜の芽が出てくる頃にはその周り中カヤツリグサの葉が埋め尽くす。空しい作業だと知りつつ、憎き黒い塊をあらかた取り除いた後、種を蒔いた。目印にする支柱を物置に取りに行くと、その一本に薄茶色の物が。カマキリの卵だ。寛大が卵から孵化するところを見たいと言っていた。帰りに持って行ってやろう。
娘の家に寄ると、授乳中だった。宗矢に乳を飲ませながら娘が言う。「毎日、寛大と実歩に何をさせようか考える時間が無くなって、何か怠けているような気がするに」。娘の心の中にも穴が空いている。「しゅうちゃん」と声を掛けると、乳を含みながら宗矢は笑った。毎日顔を合わせてきたので、私を安心できる人と認識してくれたのだ。夫はまだまだ見知らぬ人の域を出ていないようで、顔を見せると泣きべそをかいた。
そして、迎えた週末、寛大、実歩は明るい顔でやってきた。寛大は虫捕り網を手に、実歩は私と手をつなぎ、娘は宗矢の座る乳母車を押し、バッタの公園に出かける。寛大に付いて蝶を探していると、何と、たまたま目に入った木の枝に、でっかいカマキリの卵がへばりついているではないか。二つ目の卵だ。これで、寛大念願のカマキリの孵化が見られるぞ。