専業ババ奮闘記その2 里帰り⑥
今のところ、宗矢はそう大泣きはしない。寛大が産まれた時、初めてそういう手段があることを知った。マーケット袋をもみもみするのだ。その音が、母胎内にいる時の音に似ているのだとか。寛大が泣いて、いくらあやしてもどうにもならない時、抱っこしながら袋をもみもみすると、不思議と泣き止んだ。だから、部屋にはマーケット袋を常に置いていた。実歩の時も、袋は欠かせなかった。けれども、宗矢はまだ使ったことがない。母親の年を考え、ついでに祖母の年齢も考慮し、あまり負担を掛けないようにしてくれているのだろうか。
暦の上では春になって間もない日の明け方、ドンと音がするので、不審者でも侵入したのかと階段を下りる。娘も宗矢も眠っていて、ことりとも音がしない。玄関の方を見ると、外がほの明るい。積もった雪が、屋根から落ちる音だったようだ。安心して布団に潜り込んだが、なかなか寝付けず、再度階段を下り、焼酎を一口あおって横になる。少し眠ったようだ。
翌朝、寛大と実歩は雪が積もっているのを見て大喜び。我が子が小さかった頃使っていた手袋を出してやった。前夜は、保育所でエプロンが要るというので、息子が小学校の時に作ったのを出している。パズルやブロック、ウルトラマンや怪獣のフィギュアなど、今、寛大や実歩が使っている遊び道具は、皆我が子が使っていたものだ。捨てずに取っておくものだ。
義母の身の回りの世話をしてデイサービスに送り出し、その日は一日中家の中。宗矢の風呂は、ストーブをガンガン燃やした中で行った。雪はしんしん降り積もる。寛大、実歩の迎え以外、外へは出ずじまいで夜になる。夕食を終え、寛大と実歩が風呂から上がり、娘が風呂に入る間、宗矢を預かり、最後に私が湯船に浸かっていると、ドンドンドン。また雪ずりかと思ったが、連続音が絶えない。義母だ。慌てて風呂から上がり、部屋に行くと、電気毛布に湯たんぽまで入れて寝かせたのに、まだ寒くて眠れないと言う。エアコンをつけて部屋を暖め、「これで大丈夫ですよ」と声を掛ける。
その夜中、あまりの冷え込みのせいか、寛大も実歩も布団から脱出しなかった。