専業ババ奮闘記その2 出産①
義母のことは夫に頼み、真っ暗な中を、玉湯にある娘の家まで車を走らせる。信号はどこも点滅で、すれ違う車はほとんどない。家に着くと、玄関に娘と忠ちゃんが立っていた。
「寛大と実歩二人だけにしておけないからね」細い声で娘が言う。当たり前だ。二人が出ていくと、すぐに二階に上がった。豆球の明かりで、寝入っている二人が見える。実歩が布団の上に脚を出しているので布団の中に入れる。二人の間に横になると、今度は寛大が動いて反転する。二人の間に潜り込み、布団を掛けるのが仕事だ。目を閉じる暇がない。二時間余り、その作業を繰り返していたところ、下で物音がした。時計を見ると、三時だ。階段をゆっくり上ってくる音がし、戸が開いて忠ちゃんが顔を出した。「まだ生まれそうにないけん、一旦帰れって。お母さんも帰って少し寝てください」と言われるので、「六時頃にまた来るね」と言って、また暗い道に車を走らせた。家に着くと鍵がかかっている。眠っている夫には悪いと思いつつも、携帯電話で起こし、開けてもらう。
少しだけ眠り、五時には起きて朝食を摂り、娘の家に向かう。あり合わせで忠ちゃんの弁当を作り、寛大と実歩の朝食を作る。「どうしても仕事が休めんで。後のこと、お母さん、頼みます」という忠ちゃんに、「娘は、寛大と実歩を出産に立ち会わせたいっていうけど、顔を見せるだけで、立ち会いまでは止めとこうと思うけど、それでいい」と確認する。寛大の時に、その場にいられないほどの思いを共有していたので、忠ちゃんも同じだろうと確信はしていた。「ぼくもそう思います」と言って、忠ちゃんは六時半に家を出た。長男を送り出す時も、いつも六時半だ。
家の中に入り、寛大と実歩に朝食を摂らせ、着替えをさせたり、歯磨きをさせたり。明日から、場所を我が家に移し、こういう朝が毎日やってくるのか。これに義母の世話も加わるのか。いやいや、まずは、娘の無事な出産だ。
保育所に行く準備が整った寛大と実歩を車に乗せ、「お母さんに会いに行くよ」と言って病院に向かった。