人生の誰彼 2 心の骨粗鬆症
定年退職をした後、再雇用でなんとか首が繋がった状態で三ヶ月ほどが経ちました。周りの社員の方達も、私のことを既に定年退職したお爺さんと思っているようで(事実その通りなんですが)、殆ど交流がなくなりました。
仕事も手抜きをするようになりました。といっても仕事自体を怠けているのではなく気持ちの手を抜いているのです。それも故意にやっている訳ではなく、そもそも気が乗らないのです。もう四十年もそれなりに世話を焼いたのだから、後は若い人たちに任せればいいや、年寄りが出しゃばっても迷惑だろう、そんな感じです。精々好々爺を演じようかと思います。
先日、外注で仕事を依頼している方が久々に来社された折、自分の後任予定の社員を紹介しました。そのとき先方さんに「実は私、九月で定年退職して、その後も再雇用で仕事は続けています」と言うと「えーっ!そうなんですか?もうそんなお年だったんですかっ!」と事のほか驚かれて、こっちが驚いてしまいました。帰り際に再度「いやーっ驚きましたぁ」と言って去っていかれたのには流石に苦笑せざるを得ませんでしたが。
先頃ネットニュースを見ていたら、女子プロレスラーのダンプ松本さんも還暦で同学年だということを知りました。お元気そうで「生涯現役を誓った」と記事にありました。女子プロレスラーの年齢など考えたこともなかったので少し意外でしたが、それじゃあちなみに神取忍さんも同じくらいかなぁと調べてみたら、あら失礼、まだ?五十六歳でした。そういえば、いつの頃からかよく聞くようになった『心が折れる』という表現を広めたのが神取忍さんだと言われています。二十年以上前のある試合で「(対戦相手の)骨でも肉でもない、心を折ってやると考えてた」と、後のインタビューで答えたのがキッカケとのこと。やっぱり怖いですね、神取さん。
ふと考えるに、今の私も心が折れかけているのではないかと。折れるというか、心がスカスカの骨粗鬆症状態になっているのではないかという気がします。時折、頭の中に綿菓子でも詰まってるんじゃないかと思うことさえあるほどです。『心が骨粗鬆症』というのも自分で言い得て妙だなと思い、広まったらいいなと考えるのですが、言い難くて駄目ですかね。